いつもと同じやり方から抜け出せない、斬新なアイデアが思い浮かばない……それは、無意識のうちに「お決まりのパターン」に縛られているからかもしれません。本記事では、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す!認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、稀代のヒットメーカー秋元康氏の思考法から、消費者の思い込みを一瞬で揺さぶる「驚き」の創出方法と、日常から企画のヒントを見つけ出すための具体的な準備について解説します。

企画人になるための準備

日本人は真面目で、与えられたルールのなかで最善を尽くすことを良しとする傾向があります。そのため、「予定調和」から外れた発想に慣れていない人が多いのも事実です。特に、日常業務がルーティン化している人、長く同じ業界に身をおいている人、あるいは新しい企画づくりの経験が少ない人にとって、認識を転換させるような驚きを考えろといわれても、すぐには難しいと思います。


そうした人にこそ必要なのが、日頃から「驚きをプールする」ための準備です。突然アイデアをひねり出すのではなく、平常時から自分の感性を磨き、素材をためておくことです。そのためのヒントを秋元康氏のように予定調和を壊す達人の発想法から学ぶことができます。

 

秋元氏の発想法のなかで象徴的なのが「リュックサック理論」です。彼は次のように語っています。


「僕は日常的にさまざまな気づきをリュックサックにどんどん入れて、必要なときに取り出すという作業を行っているのです。重要なのは、リュックサックに入れるときや、あるいは取り出すときに、その素材に対してどれだけ想像力を働かせて拡大できるかということ。そこにこそ、企画を生む秘訣があるのです。そして、僕はどんなときにでもこういうことを考え続けているのです」(『秋元康の仕事学』 NHK出版)

 

この理論を分かりやすく言い換えると――日常のなかで出合った面白い情報や気づきを「頭のリュック」にストックしておき、企画を考える際にそれらを組み合わせて新しい発想を生み出すという考え方です。


大切なのは、情報をただ集めるのではなく、「これをどう活用できるか?」と想像を加えながら蓄積することです。街で見かけた光景、テレビで聞いた何気ない一言、SNSの投稿、友人との会話――そうした日常の断片が、将来のアイデアの種になります。

 

また、秋元氏はもう一つ、印象的な言葉を残しています。


「自分が「おや?」と思ったことに対して、心の中でどんどん附箋をつける作業から始まります。そうやって、自分のフィルターを通して附箋をつけていく作業には、『そんなのつまんないよ』と人から言われることもありません。つまり、正解というものはない。あるとすれば、自分が面白いと思ったことが正解なのです」(前掲書)

 

この「附箋をつける」という比喩は非常に示唆的です。私たちは日々、膨大な情報にさらされていますが、意識を向けなければその大半を素通りしてしまいます。しかし、心の中で「おや?」と反応した瞬間に附箋をつけておけば、あとになってそれを組み合わせることで、思いがけないアイデアへと発展させることができます。


秋元氏が語るように「附箋をつける」という行為は他人の評価を気にせず行える点が最大の利点です。まだ形になっていない段階では、誰にも批判されません。だからこそ、自由に想像を膨らませることができ、自分の感性を試す最も安全な訓練の場になるのです。

 

筆者自身も、日常のなかで「おや?」と思った瞬間を写真に撮ったり、スマートフォンのメモ機能を使って保存したりする習慣を続けています。SNSを小まめに確認するのも「おや?」「あれ?」「なんで?」の刺激を自分に与えて「附箋候補」を探す手段になっています。気になるSNSの投稿もスクリーンショットで保存しています。目的を持たずにためておくだけですが、あとになってそれが思わぬ形で企画のヒントになることが少なくありません。

 

企画人になるための第一歩は、特別な発想力を身につけることではありません。むしろ、日常のなかで小さな違和感や驚きを見逃さない感性を磨くことにあります。


「おや?」「あれ?」 「なんで?」……。

 

この一瞬をスルーせず、心の中にそっと附箋を貼る。その積み重ねこそが、やがて「予定調和を壊す」、つまり認識を転換させるための視点が育っていくのです。

 

 

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※本連載は、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す! 認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、解説します。

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

松本 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

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