「普通の果物」から「スーパーフルーツ」へ
キウイフルーツの事例は、既存商品のなかに埋もれていた価値を再発見し、それを新しい認識として定着させた代表的な私の成功例といえます。
2010年代前半まで、キウイフルーツは「数ある果物の一つ」として認識され、ミカン・リンゴ・イチゴといった三大果物に比べると、明確な存在理由を持たない普通の果物にすぎませんでした。
消費者の印象は「酸味があってさっぱりする」「なんとなく健康に良さそう」程度で、むしろ「思ったより酸っぱい」「食べ頃が分かりにくい」など、過去に1度や2度は失敗した経験がある果物というマイナスの認識も定着していました。
この状況を前に、私が最初に行ったのは、キウイフルーツそのものの再定義でした。最初に調べたのは、スーパーフードなどによくあるようなキウイフルーツ特有の栄養素がないか? という点でした。しかし、すぐに特別な栄養素はないことが分かりました。そこで、再度、栄養成分を徹底的に調べました。
その結果、キウイフルーツはビタミンCがレモン3個分、食物繊維がバナナ3本分、ビタミンEがリンゴ数個分という、複数の栄養素をたくさん含んでいる“栄養密度が高い”果物であることが明らかになったのです。それにもかかわらず、この事実は当時の消費者にほとんど知られていませんでした。つまり、キウイフルーツの特別な商品特徴が伝わっていなかったのです。
私は、まずここにレベル3の驚きを設計しました。キウイフルーツに貼られていた「特長のない果物の一つ」という認識を、「栄養密度が高いスーパーフルーツ」に転換する。事実に基づいた“新しいストーリー”を提示することで、消費者の頭の中でキウイフルーツの位置づけを再配置したのです。
この「驚き」を持続的な理解に変えるために重要だったのが「象徴」の設計でした。そこで私は、栄養士・管理栄養士・医師といった専門家を象徴として登用し、キウイフルーツの栄養価を科学的根拠とともに語ってもらいました。これにより、メーカーの宣伝ではなく専門家が推奨する健康食材という信頼をつくり出せたのです。
また、一般消費者による体験談も象徴として活用しました。「便秘が改善した」「肌の調子が良くなった」「疲れにくくなった」――こうした声は、専門家の権威性と生活者の親近性の双方を兼ね備えた、理想的な象徴として機能しました。
さらに、「現象」との接続では、時代の空気を的確にとらえることを意識しました。当時、日本では健康志向の高まりとともに「腸活」ブームが到来し、美容やアンチエイジングへの関心が急速に拡大していました。
私たちはこの社会的トレンドを背景に、「食物繊維が豊富だから腸活に効く」「ビタミンCがレモン3個分だから美肌にも」「夏バテ防止にはキウイ」といったメッセージを発信。健康意識の高まりという「現象」を味方につけ、キウイフルーツに「健康的な人が選ぶフルーツ」という認識を補強しました。
そのうえで、最後の「納得」の設計です。レモン・バナナ・リンゴとの比較数値を明確に提示し、消費者が自然に納得できる事実を前面に出したのです。同時に、「家族の健康を考える賢い選択」「健康的な自分でありたい」という感情に訴えかける納得も提供しました。
こうして、キウイフルーツを「普通の果物」から、「栄養価の高いスーパーフルーツ」へと認識転換させることに成功しました。
もちろんこの設計ありきでPRやマーケティング施策を講じてきたことはいうまでもありませんが、この転換によって消費者にとってキウイフルーツが「知っている果物」ではなく、「選ぶ理由がある果物」になったのです。驚き、象徴、現象、納得――4要素が連動して動いたとき、長年固定されていた市場でもポジションが一気に塗り替えられた好例といえます。
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