「着信だけで心臓バクバク…」休職後も鳴りやまない会社からの連絡。〈退職代行〉では終われない休職女性のSOS【社労士が「退職代行の限界」を解説】

「着信だけで心臓バクバク…」休職後も鳴りやまない会社からの連絡。〈退職代行〉では終われない休職女性のSOS【社労士が「退職代行の限界」を解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

会社からの強い引き留めで、辞めたいのに辞められない。そんな労働者の救いの一手として「退職代行サービス」が普及していますが、実は万能ではありません。すでに人間関係がこじれ、未払い賃金や社会保険料の精算などが発生している場合、単なる「退職の通知」だけでは根本的な解決にならないケースが多いのが現実です。心身のバランスを崩して休職に追い込まれた20代女性の事例をもとに、退職代行の限界と、労働局の「あっせん」制度を活用した正しいトラブル解決について、社会保険労務士の岡佳伸氏が解説します。

民間業者にはない「交渉権限」…退職代行が「出口」にならない理由

このAさんの事例が示しているのは、「退職代行の限界」です。

 

労働局のあっせんは、紛争当事者の間に公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、話し合いによる解決を図る制度です。Aさんのようにすでに人間関係が壊れ、金銭や社会保険料の精算が残っている場合、単なる退職代行業者の「通知」だけでは足りません。

 

通知だけで終わらせようとすると、未払い賃金、有給休暇、貸与品、離職票、慰謝料などの問題が残り、あとから別の紛争として表面化します。だからこそ労働者側は、自分の問題が「退職意思の伝達だけで済むもの」なのか、「交渉や第三者手続きが必要なもの」なのかを見極める必要があります。

 

未払い賃金を請求したい、残業代を精算したい、有給休暇を使い切りたい、パワハラの慰謝料を求めたい、貸与品をめぐって揉めている……。

 

このような場合は、「民間業者の退職代行(業者型)」では法律上の交渉権限がないため限界があります。最初から交渉権限を持つ「弁護士型」を検討すべき場面がありますし、「労働組合型」を利用する場合も適切に対応しているかを慎重に確認する必要があります。

 

退職代行は、「辞める入口」にはなります。しかし、「揉めずに終わる出口」ではありません。本当に退職を終わらせるには、最後の賃金や離職票、場合によっては慰謝料や解決金まで、整理したうえで解決する必要があります。

「丸投げで自動解決」は間違い…こじれた関係を法律で切り分ける力

労働者側も、「退職代行に頼めばすべてが自動的に解決する」と考えてはいけません。

 

「退職代行に任せたから、あとは何もしなくていい」という思い込みこそが、退職トラブルを長引かせる原因です。退職代行が普及した今、労働者側に求められているのは、「とにかく辞められればいい」と安易に業者に丸投げすることではありません。

 

退職を感情でこじらせず、法律上の論点を切り分け、必要な場合には弁護士、労働局のあっせん、労働審判などを使って、自分の権利を守りながらきちんと終わらせる力なのです。

 

 

岡 佳伸

社会保険労務士法人 岡佳伸事務所

特定社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

※本稿の事例は、制度説明のために実際の相談内容の一部を再構成しております。

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