「ママはお仕事しないの?」年商20億円の44歳オーナー社長夫、専業主婦・39歳妻との離婚後、会社で失脚したワケ…きっかけは小学1年生の娘からの「純粋なひと言」

「ママはお仕事しないの?」年商20億円の44歳オーナー社長夫、専業主婦・39歳妻との離婚後、会社で失脚したワケ…きっかけは小学1年生の娘からの「純粋なひと言」

オーナー企業にとって、内部留保の積み増しは経営の安定そのものです。しかし、法的な財産分与の場では、その「蓄積」がそのまま自社株の評価額を押し上げ、配偶者への支払い能力を問われる火種となります。年商20億円規模まで拡大させた企業の「株価の増分」を、どうやって現金で清算するのか。本記事では、石田社長(仮名/44歳)の事例から、私的な財産分与による経営者の資本流出危機について、資産形成・経営アドバイザーの萩原峻大氏が解説します。※本記事で紹介する事例は、実際にあった出来事を基にしていますが、個別事案が特定されないようプライバシーに配慮し、登場人物や具体的な状況に一部変更を加えて再構成したものです。

母の日、娘伝いで明かされた父の本音

母の日の夕食。テーブルにはカーネーションが飾られ、いつもより少しだけ豪華な料理が並んでいました。娘がプレゼントを差し出し、妻(39歳)が少し照れながら「ありがとう」と笑う。どこにでもある、穏やかな家庭の風景でした。

 

しかし、小学2年生の娘の何気ない一言が食卓の空気を変えます。

 

「ママはなんでお仕事しないで家にいるの?」

 

石田社長(仮名/44歳)は、箸を止めました。

 

「それ、誰かがいってたの?」と妻が問うと、娘が答えます。「パパがいってた。ママは家にいるだけでなにもしてないって」。

 

妻の表情からは笑みが消えています。石田社長に悪気はありませんでした。しかし、妻にとっては自身の存在価値を全否定されたも同然でした。

 

経営者は本来言葉に敏感な人が多いでしょう。社員への一言、取引先への態度、銀行への返答。小さな言葉ひとつで組織や信用が揺らぐことを知っているからです。それにも関わらず、家庭だけは「いわなくてもわかる」という甘えが生じ、配慮を欠いた言葉を投げかけてしまう。石田社長もまさにそうでした。


娘は無邪気に話し続けます。「〇〇ちゃんのママはお仕事してるっていってたよ」

 

その夜、夫婦の会話は途切れました。この沈黙は、単なる夫婦喧嘩では終わらなかったのです。

「見えない仕事」への想像力の欠如

翌朝、妻はいつもどおり朝食を用意していましたが、漂う空気は重いものでした。

 

「昨日の話なんだけど」唐突に、妻が口を開きます。「私って、あなたにとって“なにもしてない人”なの?」。

 

石田社長は「いや、そういう意味じゃなくて……」と慌てて否定しましたが、本心ではどこかこう思っていたのです。

 

「実際に稼いでいるのは自分だ」

 

確かに、妻が長年担ってきた役割は目にみえにくいものでした。子どもの送り迎えや学校・塾とのやりとり、親族との関係構築、社長夫人としての周りとの付き合い……。

 

これらは家庭と会社を維持するために不可欠な役割でしたが、石田社長はそれを評価していなかったようです。初めてその重さを考えたものの、一度こじれた感情は簡単には修復できません。

 

次ページ婚姻期間中に形成された財産は夫婦の共有財産

※本連載は萩原峻大氏による書き下ろしです。

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