トランプ氏がIRSを100億ドル提訴――「自分の政府を自分で訴える」異例訴訟に裁判所が懸念【国際税理士が解説】

トランプ氏がIRSを100億ドル提訴――「自分の政府を自分で訴える」異例訴訟に裁判所が懸念【国際税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

トランプ大統領が起こした100億ドル規模の対IRS(内国歳入庁)訴訟が、アメリカで大きな議論を呼んでいます。自身の納税情報が漏洩したことへの損害賠償請求ですが、問題視されているのは、原告であるトランプ氏自身が、被告側のIRSや財務省、さらにはそれらを弁護する司法省のトップでもあるという点です。裁判所は「公平な裁判が成立するのか」と異例の懸念を示しており、税金を原資とする和解の可能性にも批判が強まっています。4月末に『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か——税制が映し出すアメリカの真実』を刊行したばかりの奥村眞吾税理士が解説します。

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IRS情報漏洩事件で始まった100億ドル訴訟

今回の訴訟の発端となったのは、IRS(内国歳入庁)の業務委託先であるコンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトンの元社員、チャールズ・リトルジョン氏による大規模な税務情報漏洩事件です。

 

リトルジョン氏は、トランプ氏の納税申告書をニューヨーク・タイムズへ流出させたほか、超富裕層の税務情報を調査報道機関プロパブリカへ漏洩したとして、2024年に禁錮5年の実刑判決を受け、現在服役しています。

 

同氏は約40万5,000人分の申告情報にアクセスしていたとされ、流出対象には、イーロン・マスク氏、ケン・グリフィン氏、ジェフ・ベゾス氏らも含まれていました。すでに、ケルシー・ウォーレン氏はブーズ・アレン・ハミルトンを提訴し、ケン・グリフィン氏もIRSと財務省を相手取った訴訟を起こしています。

「オーナー社長が自社を訴えるようなもの」と裁判所が懸念

しかし今回、特に問題視されているのは、原告であるトランプ氏自身が、現在米国大統領として、被告であるIRSや財務省、さらにはそれらを弁護する司法省の“最高責任者”でもあるという点です。

 

裁判長は司法省に対し、「原告と被告が事実上同じ支配構造の下にあるなかで、公正な裁判が成立するのか」と疑問を呈し、5月20日までに見解を示すよう命じました。いわば、「オーナー社長が自分の会社を訴えているようなものだ」という構図です。

 

この指摘が出たのは、トランプ氏側の弁護士が「連邦政府との和解協議を進めている」と裁判所に報告した直後でした。裁判所としては、最終的に納税者の税金から、ビリオネア大統領へ巨額の和解金が支払われる事態を懸念しているとみられています。

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