トランプ氏がIRSを100億ドル提訴――「自分の政府を自分で訴える」異例訴訟に裁判所が懸念【国際税理士が解説】

トランプ氏がIRSを100億ドル提訴――「自分の政府を自分で訴える」異例訴訟に裁判所が懸念【国際税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

トランプ大統領が起こした100億ドル規模の対IRS(内国歳入庁)訴訟が、アメリカで大きな議論を呼んでいます。自身の納税情報が漏洩したことへの損害賠償請求ですが、問題視されているのは、原告であるトランプ氏自身が、被告側のIRSや財務省、さらにはそれらを弁護する司法省のトップでもあるという点です。裁判所は「公平な裁判が成立するのか」と異例の懸念を示しており、税金を原資とする和解の可能性にも批判が強まっています。4月末に『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か——税制が映し出すアメリカの真実』を刊行したばかりの奥村眞吾税理士が解説します。

トランプ政権下で強まる大統領権限と司法省の独立性

トランプ氏側は、「これは大統領としてではなく、一個人としての訴訟だ」と主張しています。

 

しかし裁判長は、司法省は本質的に大統領の影響下にあり、とりわけトランプ政権下では、大統領権限を強化する大統領令が相次ぎ、行政官に対し“大統領の見解に反する法解釈”を認めない方向性が強まっている点を問題視しています。

 

当然ながら、その対象には司法長官も含まれます。司法省にはIRSや財務省を弁護する法的義務がある一方で、大統領に従属する立場にもあります。つまり、「本当に司法省は被告側として独立した防御を行えるのか」という利益相反の問題が浮上しているのです。

 

このため、「トランプ氏が大統領職を退くまで訴訟を停止すべきだ」との声も出ています。ただ、現時点で裁判所はそこまで踏み込んではいません。

和解金の原資は国民の税金?

もっとも、トランプ氏の“訴訟体質”自体は今に始まったことではありません。しかし、現職大統領がIRSや財務省に対し100億ドル規模の訴訟を起こし、その原資が最終的に国民の税金になる可能性があるという構図は、政治的にも印象が悪いと言えるでしょう。

 

さらに、米国では現在、中東情勢への軍事対応によって巨額の財政支出が続いています。米国防総省(ペンタゴン)は、今回のイラン関連軍事行動で、すでに約250億ドル規模の費用が発生したとしています。一方で、トランプ政権が推進する「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案」では、福祉関連予算の削減も議論されています。

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