私が出ていかなければいけないの?住み続けたい自宅を巡り対立…〈都内1億円超の自宅〉を共有する70代女性が深刻なトラブルに巻き込まれたワケ【相続の専門家が解説】

私が出ていかなければいけないの?住み続けたい自宅を巡り対立…〈都内1億円超の自宅〉を共有する70代女性が深刻なトラブルに巻き込まれたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

70代の女性が住み続けてきた自宅。しかし、その不動産は夫の死後、義妹との共有名義となり、やがて「住み続けたい」という思いと「売却して分けたい」という意向が真正面から衝突します。都内の一等地という高い資産価値が、かえって問題を複雑化させていく──。相続の現場で頻発する「不動産の共有」は、なぜここまで深刻なトラブルを招くのか。解決の糸口はどこにあるのか。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとにその本質と対策を解説します。

共有不動産の本当の怖さ

この問題の本質は、人間関係のこじれだけではありません。むしろ、その背景にある「共有」という仕組みそのものにあります。

 

まず、共有不動産は単独では何も決めることができません。売却する場合も、建て替える場合も、賃貸に出す場合も、あるいは担保に入れて融資を受ける場合であっても、すべて共有者全員の合意が必要となります。つまり、一人でも反対すれば、その不動産は一切動かすことができなくなるのです。今回のように意見が対立している場合、不動産は完全に「止まった資産」となってしまいます。

 

さらに問題なのは、時間が経つほど状況が悪化していく点です。共有者が亡くなると、その持ち分は子どもへ、さらに孫へと引き継がれていきます。その結果、関係者が増え続け、最終的には「誰が共有者なのか把握しきれない」状態に陥ります。こうなってしまうと、実務的には解決が極めて困難になります。

 

そしてもう一つの大きな問題が、感情の介入です。今回のケースではすでに「出ていけ」という発言や、過去の関係性に対する不満が存在しています。このような状況では、問題は法律や制度の話ではなくなり、感情の領域へと移行します。そうなると、価格交渉はまとまらず、話し合い自体が成立しなくなり、最終的には連絡すら取れなくなる可能性があります。

このまま放置するとどうなるか

では、この状態を放置した場合、どのような未来が待っているのでしょうか。

 

結論として、状況は確実に悪化します。相続が繰り返されることで関係者は増え、やがて所在不明の相続人が現れることも珍しくありません。その結果、売却すらできない「塩漬け不動産」となり、資産としての価値を活かせなくなります。

 

さらに、今回のように居住者がいる場合、その人は常に「いつ退去を求められるかわからない」という不安を抱え続けることになります。本来、安心して暮らすべき自宅が、精神的な負担の源となってしまうのです。

解決策3つ

このような共有問題に対する解決策は、実は限られています。

 

まず最も望ましいのは、共有状態を解消し、単独所有にすることです。そのためには、他の共有者から持ち分を贈与してもらう、あるいは買い取る、または遺言によって承継先を決めるといった方法があります。ただし現実的には、無償での贈与は難しく、多くの場合は金銭を伴う交渉になります。今回のケースでも、評価上は一人あたり2,000万円以上の金額が提示されても不思議ではありません。

 

次に考えられるのは、不動産を売却し、その代金を持ち分に応じて分配する方法です。この方法は公平性が高く、トラブルを残しにくい一方で、「住み続けたい」という希望を持つ人にとっては大きな決断を迫られます。

 

そしてもう一つが、売却後に賃貸として住み続ける、いわゆるリースバックという方法です。ただしこれは、買い手の条件や家賃負担などの問題があり、すべてのケースで実現できるわけではありません。

このケースの重要なポイント

今回の事例から見えてくる重要なポイントは3つあります。

 

第一に、共有は善意で始まりながら、最終的には対立を生みやすいという点です。相続の場面では「とりあえず共有にしておこう」という判断がされがちですが、それがあとの大きなトラブルの原因になります。

 

第二に、不動産は現金のように簡単に分けることができない資産であるという点です。だからこそ、最初の段階でどのように承継させるかという「設計」が極めて重要になります。

 

そして第三に、今回のケースはまだ共有者が3人であるという点です。この段階であれば、まだ解決の余地があります。しかし次の相続に進めば、関係者が増え、難易度は一気に上がります。つまり、今が最後のチャンスとも言えるのです。

まとめ

今回の事例は決して特別なものではありません。都心の一等地であっても、家族の不動産であっても、共有状態である限り、同じ問題はどこでも起こり得ます。

 

そして一度こじれてしまうと、「出ていけ」といわれるような状況になり、住み続ける不安を抱え、最終的には家族関係そのものが壊れてしまう可能性があります。

 

だからこそ重要なのは、共有を放置しないこと、できるだけ早い段階で整理すること、そして感情ではなく設計で解決することです。

 

相続対策とは、単に税金を下げることではありません。

 

「安心して住み続けられる状態をつくること」こそが、本来の目的です。

 

もし今、共有不動産を持っている、家族間で意見が分かれている、将来に不安を感じている、そういった状況にあるのであれば、「まだ解決できる段階かどうか」を一度冷静に確認することをおすすめします。 必要であれば、この事例をもとに「1枚でわかる相続設計図」として整理することも可能です。

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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