金価格急落は一時的な逆風?…中国の強い現物需要が長期の“追い風”に。金のパフォーマンスのカギを握るFRBの政策転換【4月の金市場】
(※画像はイメージです/PIXTA)
2026年4月の金市場は、3月の原油高ショックとFRBの政策観測の急反転によって短期的な急落に見舞われました。しかし、これはあくまで“一時的な逆風”にすぎません。中国の強い現物需要や各国中央銀行の金購入、さらに財政悪化と債務膨張といった構造要因が、金にとってはむしろ長期的な追い風となっています。本記事では、金市場の現状と今後の金価格を左右する要因を整理します。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。
中央銀行の金需要がETF流出を上回る
3月の金ETF流出も、長期需要は堅調
実物の裏付けのある金ETFによる金の保有高は年初から好調な滑り出しとなりましたが、3月には124億ドル(約90トン)減少し、9ヵ月連続の資金流入が途切れ、年初来の純流入額は117億ドル(約57トン)まで減少しました※19。
金ETFから資金が流出した原因は、広範囲にわたり流動性が逼迫したことと利益確定の売りによるものとみられます。その背景として、FRBの政策と米ドルの短期的な予測が見直されるなかで、投資家が流動性の高い代替資産やヘッジ資産から資金を引き揚げたことが挙げられます。
とはいえ、当社は、グローバルなディベースメントへの対応、分散投資手段、代替不換通貨、ならびにデュレーションのヘッジ手段として投資家が金を求め続けてきた裾野の広いトレンドが、わずか1ヵ月間の資金流出(たとえそれが大規模なものであっても)で断ち切られるとは考えていません。
各国の金購入が広がる一方、トルコは外貨確保で売却
公的部門からの需要は依然として底堅く、2月に更新されたデータでも、ポーランド(+20トン)、ウズベキスタン(+8トン)、チェコ共和国(+2トン)、マレーシア(+2トン)、中国(+1トン)などからの安定的な購入が継続しています※20。
主な例外は、過去10年にわたって世界で最も積極的に金を購入した国の一つであるトルコです。同国は、戦争に伴うボラティリティの上昇、エネルギー輸入コストの上昇、および資金調達への圧力が広範に高まるなか、リラの防衛および流動性需要対応のため、80億ドル (約60トン)相当の金の売却やスワップ取引を行いました※21。
重要な点は、こうした対応は金に限ったものではなく、政策当局は過去数週間の間に、米国債を含む約160億ドル相当の外貨建て債券を売却しています。1月末時点でのトルコの米国債保有額は170億ドル未満と、2015年の820億ドルから減少しています※22。
最近の動向は、外貨準備資産としての金の戦略的役割を強化するもので、長期的には公的部門からの金需要が徐々に高まる可能性があります。トルコによる金準備の活用は、紛争による経済的コストを補うための流動性の源泉として金が有効であることを浮き彫りにしています。
フランスでは金準備の評価額が一時的に上昇したことを背景に、フランス銀行(中央銀行)は2025年に金取引で110億ユーロのキャピタルゲインを獲得し、81億ユーロの黒字に転じました※23。
ロシアも金が財政に追い風となった好例です。同国の中央銀行は、軍事支出の増加に伴う財政赤字の拡大を埋めるため、1月~2月にかけて14トンの金を売却したと報じられています※24。
これらの動向を総合すると、地政学的に分断が進む世界における金の有用性を浮き彫りにしているだけでなく、流動性の源泉、バランスシートの支援手段、そして対外的な政策リスクに対するヘッジ手段としての金の価値がさらに高まっています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohanad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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本稿に示されている見解は2026年3月2日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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〈注記〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※2 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※4 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※5 Source: CBO, as of 02/28/2026
※6 Source: China Customs, World Gold Council, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※7 Source: SGE, LBMA, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※8 Source: China Customs, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※9 Source: People’s Bank of China, State Street Investment Management, as of 02/28/2026
※10 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※11 Source: World Gold Council, Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/30/2026
※12 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※13 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※14 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※15 Source: Institute for International Finance, IMF, World Bank, State Street Investment Management, as of 12/31/2025
※16 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※17 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※18 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※19 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/30/2026
※20 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 03/10/2026
※21 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※22 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 01/31/2026
※23 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/24/2026
※24 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 03/25/2026
〈出所〉
★1 出所:上海黄金取引所、LBMA、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(2003年~2026年第1四半期)。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★2 出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2026年3月30日時点。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★3 出所:ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2026年3月30日時点。
〈用語集〉
中央銀行:一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。
COMEX:コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。
金のスポット価格:スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
実質金利:インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
ICEブレント:インターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されるブレント原油先物で、国際的に取引される原油の主要なベンチマーク価格の一つです。
レフトテール・ヘッジ:株式急落、政策ショック、通貨の不安定化など、極端に悪い市場結果(下振れ)からポートフォリオを守るためのポジション。金は、市場全体におよぶストレス局面における過去のパフォーマンスから、レフトテール・ヘッジとして位置づけられることが多いです。
30日移動平均ボラティリティ:資産の過去30日間のリターンの年率換算標準偏差を測定、変動するリスクを示すため毎日更新されます。価格変動の激しさを定量し、値が高いほどリスクが大きいことを示します。
ディベースメント(通貨価値の切り下げ):通常、インフレ、過剰な通貨発行、あるいは時間の経過とともに通貨の価値を弱める政策によって引き起こされる、通貨の実質価値または購買力の低下を指します。
タカ派的な政策転換:中央銀行や政策当局のメッセージが金融引き締め方向へとシフトすることで、通常、政策金利の引き上げ、利下げ幅の縮小、あるいはインフレ抑制の強化を示唆します。
代替不換通貨:主要な準備通貨(特に米ドル)の代替として使用される、非伝統的な不換通貨を指します。
中国人民銀行(PBOC):中国の中央銀行であり、金準備を継続的に積み増している主要な構造的買い手。
CNY:国内外国為替市場における中国人民元(人民元とも呼ばれる)の略称。
リラ:トルコの通貨で、正式名称はトルコリラです。マクロ経済の文脈では、急激な通貨安やインフレ圧力に直面してきた通貨の例として、しばしば引き合いに出されます。