(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が子どもを支える関係では、「信頼」を前提にお金の管理を任せる場面も少なくありません。しかし、その距離の近さゆえに、異変に気づきにくくなることもあります。気づいたときには、家計だけでなく、親子の信頼そのものが揺らいでいた――そんなケースも起こり得ます。

「少しだけ助けて」始まりは小さなお願い

埼玉県内で一人暮らしをする久美子さん(仮名・74歳)は、年金月14万円で生活しています。夫を亡くしてからは、慎ましくも安定した日々を送っていました。

 

「贅沢はできませんが、困るほどではありませんでした。毎月の支出も大体決まっていて、貯金も少しずつ残せていたんです」

 

そんな生活が変わり始めたのは、長男の亮太さん(仮名・45歳)から一本の電話があったときでした。

 

「“仕事がうまくいかなくて、少しだけ助けてほしい”って。最初は3万円だけでいいと言われました」

 

亮太さんは以前、会社員として働いていましたが、転職を機に収入が不安定になっていました。久美子さんは迷いながらも、「一時的なものなら」と考え、仕送りを始めます。

 

「自分の生活を切り詰めれば何とかなると思いましたし、息子ですから、見捨てるわけにもいきませんでした」

 

その後も、「今月だけ」「来月には戻るから」という言葉とともに、仕送りは続きました。月3万円という金額は、久美子さんにとって決して軽いものではありませんでしたが、「必要なことに使っているはず」と信じて疑いませんでした。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の可処分所得は月約11.8万円、消費支出は月約14.8万円です。年金月14万円という条件では、日々の生活は決して余裕があるとは言えず、そこから仕送りを捻出することは負担を伴います。

 

「自分のことは後回しにしてでも、子どもには困ってほしくない。親というのはそういうものだと思っていました」

 

しかし、その“少しだけ”は、いつの間にか1年近く続いていました。

 

異変に気づいたのは、久美子さんが通帳の記帳をしたときでした。

 

「残高が思っていたより少なかったんです。“こんなに使ったかな”と違和感があって」

 

記帳された履歴を見て、久美子さんは言葉を失いました。自分が覚えていない現金の引き出しが、何度も記録されていたのです。

 

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