AI時代の新たな需要創造
このようにして米国経済は、大きな危機に直面しても銀行貸出、政府の財政出動、そしてQEによって信用創造を行い、大いに需要を喚起していた。
しかし、ここにきて需要創造の手段にも手詰まり感が見えてきた。というよりも、需要創造の手段は、ほぼ出し尽くしたというべきだろうか。
ところが、ここでどうやら4つ目の需要創造の手段が実現化しようとしている。それが暗号資産だ。AI時代における新たな通貨の仕組みが、トランプの改革によって実現する可能性が高まってきた。ステーブルコインによる新たな信用創造である。詳細は3章に譲るが、新たに成立したGENIUS法により、米国政府は民間企業に仮想通貨(暗号資産)の発行を認め、それが既存の法定通貨と同様に流通する仕組みをつくった。ステーブルコインの発行には米国債等の担保資産が求められるため、米国国債需要の増加にもつながる。実施までには曲折も予想されるが、米国経済の次の需要創造につながっていくのではないかというのが、現時点における私の仮説である。
このように米国経済の歴史を振り返ると、「商品貨幣論か信用貨幣論か」の論争に対する結論はすでに下されているといえる。米国の強みは、融通無碍である。貨幣や信用に実態があるかないかという神学論争ではなく、機能し持続可能性があればそれでいいのだ、究極の信用貨幣論を実践している国といえる。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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