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便利なツールほど組織を迷走させる
土台ができていなければ、便利なツールほど組織を迷走させます。その典型例が40年近く前に登場し、今でも多くの人が便利に使っている表計算ソフトの導入期にありました。
1980年代の半ばにNECのPC‐9800シリーズなどのMS‐DOSパソコンが普及し始め、ワープロソフトは一太郎、表計算ソフトはLotus1-2-3が使われて、パソコンが徐々に会社業務のなかに広がりました。
表計算ソフトの登場はさまざまなオフィス業務を一気に効率化するものでしたが、このLotus1-2-3に代わるものとしてマイクロソフトが開発したのがExcelでした。OSのWindowsとExcelの2つの開発で、マイクロソフトは存在感を増していきます。
Excelは、1995年にWindows95が世界で大きなシェアを獲得したときには、プリインストールされたマイクロソフトオフィスにWordとともに搭載され、爆発的に普及していきました。
Excelの登場は、今のAI以上といえるほど衝撃的なものでした。データの入力や整理、グラフによる表示、簡単な四則計算はもちろん、ビジネスでしばしば使う複雑な計算や統計処理などが効率的にできる関数が豊富に用意され、長期にわたって第一線で活用され続けていきます。マクロや高度な関数を駆使できる人はごく一部ですが、多くの人が「Excelは知っている」「簡単な表やグラフはつくれる」と言うでしょう。
しかしExcelは、多くの弊害も引き起こしてきました。誰でも手軽に使えることから、同じ企業のさまざまな部門でばらばらに利用されたことで、わずかに設計が異なるExcelの書類があちこちでつくられたのです。
人の手に渡るごとに少しずつ変更されて、どれがベースのものか分からなくなったり、引き継いだ人が入力の仕方を間違えて前任者がつくった関数を壊してしまったり、といったことが続出したのです。
誰がなんのために、どの業務で使うのか、そのためにどういう設計がふさわしいのかという組織的な検討がなされないまま、現場任せで利用が進んでしまったからです。似ているけれども少しずつ違うExcelの書類が広がり、かえって業務効率化の妨げになってしまいました。
AIはExcelに比べようもないほど高度で多彩な機能を持っています。誰が何に使うのかということを明確にしておかなければ、Excelと同じ混乱を招きかねません。

