「また今度ね」…少しずつ遠ざかっていった息子家族
義明さん(仮名・71歳)と妻の久美子さん(仮名・69歳)は、団地で二人暮らしをしています。
夫婦の年金収入は月19万円ほど。大きな余裕はありませんが、家賃は抑えられており、慎ましく暮らせば何とか生活できていました。
二人の楽しみは、近くの町に住む長男夫婦と孫に会うことでした。孫が小さい頃は月に一度ほど遊びに来て、久美子さんは前日から好物を用意して待っていました。義明さんも、孫と公園へ行く日を楽しみにしていました。
ところが、孫が小学校に入る頃から、会う回数は少しずつ減っていきます。習い事や友人との予定が増え、長男夫婦も仕事で忙しくなりました。
最初は「仕方ない」と受け止めていましたが、義明さんが何度も予定を尋ねるうちに、長男の返事は短くなっていきました。
「また今度ね」
その言葉が続くうちに、夫婦は誘うこと自体をためらうようになりました。
さらに、孫の誕生日のこと。久美子さんが「少しだけでも顔を見に行きたい」と連絡すると、長男から「急に来られると困る」と返ってきました。
義明さんは「迷惑だったのか」と強く受け止めてしまいました。
その後、義明さんが感情的に電話で言い返したことで、関係はさらに悪化しました。長男は「しばらく距離を置きたい」と言い、それから連絡は途絶えがちになります。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、高齢期の生活において社会参加や人とのつながりが、生きがいや安心に関係するとされています。義明さん夫婦にとって、孫との交流は単なる楽しみではなく、日々を支える大切なつながりでもありました。
息子家族と会えなくなってから、夫婦の生活は静かになりました。週末に予定を空けて待つこともなくなり、久美子さんが孫のために菓子を買うことも減りました。スマートフォンに残る古い写真を見るたび、義明さんは胸が締めつけられる思いがしました。
