信頼と管理は別問題…境界が崩れた先で起きた“預金の侵食”
栄子さんは、その場で何も言い返せなかったといいます。
「怒るより先に、“どうしてこうなったのか”が分からなくて」
通帳も印鑑も預けたのは、自分の判断でした。だからこそ、「信じた自分が悪かった」と思ってしまったといいます。
その後、親族を交えて話し合いが行われました。
洋一さんは経済的に余裕があったわけではなく、生活費の補填として母の預金に手をつけていたことを認めました。悪意というより、「家族だからいいだろう」という認識の積み重ねだったといいます。
しかし結果として、栄子さんの老後資金は大きく目減りしていました。
このようなケースでは、成年後見制度の利用が検討されることもあります。判断能力が低下した場合に限らず、任意後見契約などを活用し、第三者が財産管理を担う仕組みもあります。家族だけで管理を完結させるのではなく、外部の関与を取り入れることで透明性を確保する考え方です。
「最初から、ちゃんと線を引いておけばよかったんだと思います」
現在、栄子さんは通帳を自分で管理する形に戻し、必要に応じて親族に相談しながら生活しています。息子との関係も完全に断たれたわけではありませんが、以前のような信頼関係には戻っていないといいます。
「お金の問題って、あとから元に戻せないんです。だからつらいんですよね」
高齢期の財産管理は「誰に任せるか」だけでなく、「どう管理するか」が問われます。信頼関係があるからこそ曖昧になりやすく、境界線が引かれないまま進むことで取り返しのつかない結果を招くこともあります。
「信じたことを後悔したくはありません。でも、同じことを繰り返してほしくないとも思います」
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