(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職は、夫婦にとって穏やかな老後の始まりと捉えられがちです。しかし実際には、その節目を境に関係や家計の前提が揺らぐケースも少なくありません。長年築いてきた生活でも、資産の管理や将来の見通しが共有されていなければ、思いがけない形で不安が表面化することがあります。

通帳を見て知った現実…崩れた生活基盤

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月22万1,544円、消費支出は月26万3,979円で、平均すると月約4.2万円の赤字です。老後の家計は、もともと貯蓄の取り崩しを前提に成り立ちやすく、離婚によって世帯が分かれれば、一気に厳しさを増しやすい構造にあります。

 

「そのとき初めて、“離婚そのもの”より“これからどう生きるのか”が怖くなりました。家を出たら、私は何で暮らせばいいのか。まずそう浮かんだんです」

 

浩司さんは以前から、定年後は小さな賃貸に移って一人で暮らしたいと考えていたようでした。礼子さんには一切相談せず、すでに不動産会社にも足を運んでいたといいます。

 

「話し合いではなく、通告でした。私は“妻”なのに…」

 

その夜、礼子さんは久しぶりに自分名義の通帳を開きました。残高は、生活費の余りを少しずつ残してきた十数万円だけ。そこで初めて、自分が思っていた以上に“お金のない側”に立たされていたことを思い知ったのです。

 

「離婚されたら悲しい、どころではなかったんです。生活が壊れる、と思いました」

 

数日後、礼子さんは無料相談を利用して弁護士に事情を話しました。そこで初めて知ったのが、「名義」と「分ける対象」は必ずしも一致しない、ということでした。

 

婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は、名義が夫であっても財産分与の対象になり得ます。預貯金だけでなく、退職金も、婚姻期間中の勤務に対応する部分については分与の対象となり得るとされ、実際には個別事情に応じて判断されます。さらに厚生労働省によると、離婚時の年金分割制度では、婚姻期間中の厚生年金記録を分割できる場合があり、請求は原則として離婚等をした日の翌日から2年以内です。

 

「“もう終わりだ”と思っていたので、すぐに全部失うわけではないと聞いて、少しだけ息ができるようになりました」

 

もっとも、安心できる状況ではありませんでした。離婚後、礼子さんがすぐに十分な収入を得られる見込みは高くなく、住まいの問題もあります。専業主婦歴が長く、再就職も容易ではありません。

 

 \4月14日(火)ライブ配信/
 「名義預金」判定のポイント 

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