退職金を別荘につぎ込む定年シニアの末路を目撃する「定住組」
「冬は最低気温がマイナス15度になるのが普通です。それを快適に乗り切れるだけの備えがなければ、とてもじゃないですが暮らせませんよ」
そう語るのは、長野県にある自然豊かな別荘地に家を構えて20年以上になるTさん(68歳・男性)です。
Tさんは現役時代、勤務先から徒歩圏内だったこの別荘地に土地を買い、家を建てました。冬場の過酷な寒さを見越して、家はすべて断熱構造にしています。そのため、一年を通して家のなかは暖かく、快適だそうです。
定年退職を迎えた現在も、Tさんは他の土地へ移住したいと思ったことは一度もありません。
「庭に出れば、まるで自分自身が別荘に遊びに来ているような気分。それを毎日味わえるなんて最高です」
しかし、Tさんのような「定住組」の周囲には、当然ながら都会からやってくる「別荘組」の家も数多く並んでいます。そして、その多くが数年で空き家になっていくのを目にしてきました。
「別荘の維持管理は甘くない」の言葉の重み
「退職金が手に入ったからといって、別荘を買うシニアがあとを絶ちません。でも、別荘というのは買って終わりではないんです。2,000万円くらいじゃ維持管理は厳しいですよ」
冬場の凍結防止の作業、屋根や外壁の定期的な修繕、夏場は放っておけばジャングルのようになる庭の草刈り。これらを自分でする体力がなければ業者に頼むことになりますが、その費用だけでも年間数十万円が飛んでいきます。
雪が積もれば家から出ることもできず、湿気で家財道具はカビだらけ。退職金を取り崩しながら何とか維持しようとしても、最終的には心が折れて手放す。「退職金で資金に余裕ができたと勘違いし、見栄を張って立派な別荘を手に入れたものの、想像以上の維持費と管理の労力に耐えきれなくなるケースがほとんど」だと、Tさんは語ります。
「厳しい言い方かもしれませんが、別荘というのは本当のお金持ちが道楽で持つべきものだと思っています。なけなしの老後資金をつぎ込んで持つような代物ではありません」
Tさんの言葉には、長年厳しい自然と共存してきたからこその重みがありました。
