「失業保険を先にもらったせいで…」適応障害で退職した〈年収500万円〉48歳女性が絶望。離職票を握りしめ向かった窓口で〈痛恨のミス〉【社労士が「傷病手当金」を解説】

「失業保険を先にもらったせいで…」適応障害で退職した〈年収500万円〉48歳女性が絶望。離職票を握りしめ向かった窓口で〈痛恨のミス〉【社労士が「傷病手当金」を解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

退職後の生活を支える公的給付は複数存在しますが、心身の不調で会社を辞めた人にとって本当に重要なのは「何がもらえるか」だけではありません。失業保険の基本手当は、就職したい意思と、いつでも働ける能力があることが前提です。反対に、まだ働けない時期は、まず傷病手当金や失業保険の受給期間延長を考えるべきです。ここを取り違えると、生活を支えるはずの制度が、逆に自分を追い込むことになりかねません。本記事では、退職時の公的給付を最大限活用するための手順について、社会保険労務士としても活躍するFPの岡佳伸氏が解説します。

ギリギリで回避したペナルティ「早く申請すればよかった」では済まない

当初、ハローワークでは「返還を認めない」と対応をされましたが、Tさんは最終的に社労士へ相談し、ハローワークには悪質な不正受給ではないこと、生活不安のなかで制度を誤解していたことを丁寧に説明しました。結果として、基本手当を返還して傷病手当金を受給できました。

 

Tさんのケースでは、基本手当受給額の返還(返還命令)および、基本手当の受給権がなくなるだけで収まりました。しかし、もし悪質な虚偽申告と強く評価されれば、不正受給として返還に加え、返還額の2倍相当の納付命令まで課され得ます。加えて、健康保険給付の権利は2年で時効にかかります。交渉や資料収集が長引けば、それだけで道が閉ざされかねません。

 

さらに見落とされやすいのが、退職後の国民健康保険料です。収入急減や特別の事情がある場合、市区町村国保では保険料の減免や納付猶予を受けられることがあります。

 

特に解雇や雇止め、病気などで特定受給資格者や特定理由離職者にあたる場合は、「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」が受けられます。該当する人の前年中の給与所得を30%にして保険料を計算することで、国民健康保険料の大幅な減免が可能です。そのためにも、正しい離職理由により、基本手当の受給資格決定を受ける必要があります。

 

心身の不調で退職するとき、必要なのは「とにかく早く何かをもらう」ことではありません。先に受けるべきは傷病手当金か、基本手当か。その間に受給期間延長を入れるべきか。

 

制度は知っているだけでは足りず、順番まで理解して初めて武器になります。退職前後の一手を誤ると、取り返しのつかない差が生まれる。Tさんのケースは、そのことを痛いほど示しています。

 

 

岡 佳伸

社会保険労務士法人 岡佳伸事務所

特定社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

※本稿の事例は、制度説明のために実際の相談内容の一部を再構成しております。

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