「もう無理かもしれない」20年勤め上げた大企業を去った日
大手上場企業で、新卒から20年以上にわたり一般事務職として働いてきたTさん(40歳代後半・独身女性)。年収はおよそ500万円。決して派手ではないものの、安定した会社員生活を続けています。
ただ、順風満帆だったわけではありません。もともと体調を崩しやすく、何度か休みながら働いてきたため、同期より昇給や昇格が遅れていました。
そこへ年下の女性上司が着任します。指導は厳しく、Tさんにはそれが日に日にきつく感じられるようになりました。やがて適応障害を発症し、会社に行けたり行けなかったりを繰り返すようになります。
もっとも、勤務先は大企業だったので、有給休暇以外に病気のための特別休暇制度もあり、最大90日まで給与保障のある休みが取れる環境でした。そのため、Tさんは「まだ会社員の身分はあるのだから」と休職手続きまでは取らず、有給と特別休暇でしのぎました。
しかし、体調は一向によくなりません。結局、出勤できないまま退職を選ぶことになりました。
貯蓄が減る恐怖…離職票を握りしめ向かった窓口での「致命的な選択」
退職後、収入は止まります。貯蓄を取り崩す生活に不安を覚えたTさんは、人事から送られてきた離職票を持ってハローワークへ向かいました。窓口では「働ける状態か」が確認されます。
Tさんは迷いながらも、「週20時間以上なら働けると思う」と申し出て、受給資格決定の手続きを進めました。長年勤めた自己都合退職として、150日分の失業保険を受け終えます。
失業保険の一般受給資格では、基本手当は就職意思と就労能力があることが前提で、自己都合退職の所定給付日数は算定基礎期間20年以上で150日です。
ところが、失業保険の支給終了後、Tさんは知人から思わぬ話を耳にします。
「その状態なら、健康保険の傷病手当金を退職後も継続して受けられた可能性があったのではないか」
調べてみると、確かに在職中から労務不能で、退職時にも要件を満たしていれば、資格喪失後も継続給付の対象になり得ます。しかも傷病手当金の待期3日は、有給休暇や土日祝でも完成し、在職中に給与が満額支払われていた期間は支給停止になるだけで、要件そのものが直ちに消えるわけではありません。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算1年6ヵ月です。支給額は、支給開始日以前の直近12ヵ月の標準報酬月額の平均額などを基礎に、原則として1日あたり3分の2相当額で計算されます。
しかし、ここで大きな壁にぶつかります。
