(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金には、受給開始を遅らせることで年金額が増える「繰下げ受給」という仕組みがあります。1ヵ月あたり0.7%、最大で84%増額されるため、「長生きするほど得」と考えられがちです。しかし実際には、健康状態や就労状況、家族構成によっては、その選択が必ずしも有利に働くとは限りません。制度のメリットだけでなく、前提条件やリスクを踏まえた判断が求められます。

「長生きすれば得」だけでは判断できない

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の平均受給額は月15万1,142円で、繰下げによる増額は確かに老後の収入を押し上げる効果があります。

 

一方で、総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では月約3万円の赤字が生じており、収入と支出のバランスは決して余裕のあるものではありません。

 

繰下げ受給は有効な選択肢のひとつですが、その前提には

 

・繰下げ期間中も生活資金に余裕があること

・健康状態が安定していること

・長期間受給できる見込みがあること

 

といった条件が伴います。

 

単に「増えるから得」という理由だけで選択すると、佐藤さんのように生活面での負担や心理的な不安を抱えることにもなりかねません。

 

年金の受給時期は、単なる金額の問題ではなく、「いつ、どのように生きるか」という人生設計そのものに関わる選択です。繰下げによる増額というメリットだけでなく、その期間の生活やリスクも含めて総合的に判断することが重要です。

 

「増えるかどうか」ではなく、「自分にとって無理のない選択かどうか」。その視点を持つことが、後悔を防ぐ鍵になるのかもしれません。

 

 

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