少し手伝うだけ」のはずが…“当たり前”に変わった孫の世話
都内近郊に住む山本和夫さん(仮名・65歳)と妻の恵子さん(仮名・64歳)は、定年を機に生活を見直しました。
会社員として長年働いてきた和夫さんは、退職金とこれまでの貯蓄を合わせて約4,500万円を確保。夫婦の年金収入は月約32万円で、「贅沢はできないが、安心して暮らせる水準」だと考えていました。
「これからは、夫婦で旅行に行ったり、のんびり過ごせたらいいねと話していたんです」
そんな矢先、長男夫妻から相談がありました。
「保育園の迎えの時間が合わなくて…。少し手伝ってもらえないかな」
共働きの長男夫妻にとって、子どもの預け先は常に課題でした。山本さん夫妻は、自宅から車で20分ほどの距離に住んでおり、頼れる存在だったのです。
「最初は週に1〜2回、夕方に預かるくらいでした」
孫の世話は、当初は楽しいものでした。
「可愛いですし、一緒にいる時間は癒やしでした」
しかし、その頻度は次第に増えていきます。保育園の送迎だけでなく、急な発熱時の預かり、土日の面倒、さらには長期休暇中の対応まで、気づけば週の大半を孫と過ごすようになっていました。
「断る理由もなくて…。気づいたら当たり前になっていました」
食費やおやつ代、外出時の交通費なども積み重なり、月数万円単位の支出が増加。さらに体力的な負担も無視できませんでした。
「一日預かると、正直ぐったりしてしまって」
転機は、ある何気ない一言でした。
「今週末もお願いできる?」
その言葉に、和夫さんはふと引っかかりを覚えたといいます。
「“お願い”というより、“前提”になっているように感じたんです」
それまで感じていた小さな違和感が、一気に形を持ち始めました。
「自分たちの生活が、後回しになっている気がしました」
旅行の計画は立てづらくなり、友人との約束も調整が必要に。自由に使えるはずだった時間が、制約されていきました。
