「いずれは自立すると思っていた」実家暮らしが続いた理由
「こんなに長く一緒に住むとは思っていませんでした」
そう話すのは、地方都市で働く会社員の山田さん(仮名・61歳)です。年収は約380万円。妻はすでに他界しており、現在は一人息子の健太さん(仮名・34歳)と二人で暮らしています。
健太さんは大学卒業後、地元企業に就職しましたが、数年後に退職。その後はアルバイトや短期の仕事を繰り返しながら、実家での生活を続けてきました。
「家にいれば生活はできるので、無理に一人暮らしを始める理由がなかったのかもしれません」
家賃や光熱費の大半は山田さんが負担し、食費も含めた生活費は事実上、親の収入で支えられていました。山田さんはこれまで、「そのうち安定した仕事に就くだろう」と考え、明確な期限や条件を設けることはありませんでした。
しかし、60歳を過ぎて状況は変わります。再雇用後の収入は現役時代よりも下がり、将来の年金生活も現実味を帯びてきました。
「自分の老後資金をどうするか、考えざるを得なくなったんです」
山田さんの貯蓄は約800万円。決して少なくはないものの、老後の生活を考えると十分とは言い切れない水準でした。
さらに、日常の生活費に加えて息子の分も支え続けていることで、貯蓄の減少ペースは想定より早くなっていきました。
転機となったのは、通帳の残高を改めて確認したときでした。
「このまま同じ生活を続けていたら、自分の生活も立ち行かなくなると思いました」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得11万8,465円に対し消費支出は14万8,445円。高齢期の家計は収入だけで支えきれず、貯蓄の取り崩しに依存する構造になりがちです。そこに扶養的な支出が加われば、状況はさらに厳しくなります。
山田さんは初めて、「支え続けること自体がリスクになる」という現実を意識しました。
