工業製品ではなく工芸品…イタリアの美意識と伝統が息づく
グッチにプラダ、アルマーニとハイブランドが名を連ね、ミラノ・コレクションは世界のモード界をリードする。伝統的なバケッタ製法でなめされた美しい革製品、そして映画『甘い生活』でマルチェロ・マストラヤンニが披露した「伊達男の雛形」とも言うべきメンズスタイル。イタリアには、それほどまでに豊かで、ラグジュアリーな伝統が息づいている。
もちろん、車も例外ではない。フェラーリにランボルギーニ、フィアットにアルファロメオと「イタリア車ブランド」は枚挙に暇がないが、いま注目したいのは何と言っても、マセラティだ。2026年は、象徴的なトライデントのエンブレム誕生から100年、そしてモータースポーツ初参戦から100年と、節目の「センテナリー・イヤー」を迎えている。
創業自体は111年前という長い歴史を持ち、「マセラティ ジャパン」も約15年前に本格始動した。2016年にマセラティ初のSUVとして発表された「レヴァンテ」は日本でも大きな注目を集め、人気を博している。2021年に同社の代表取締役に就いた木村氏は、マセラティの魅力をどのように分析しているのだろうか。
「マセラティは、イタリアの美意識や伝統が息づく、ラグジュアリーな工芸品です。車の世界では『プレミアム・ブランド』という格付けが多用されますが、そのニュアンスはどちらかというと経済用語に近い。プレミアムとラグジュアリーとでは、語るべき文脈が本来異なるはずなのです。
日本の富裕層の方々は非常に目が肥えていて、ファッションセンスも洗練されています。イタリアン・スーツを違和感なく着こなし、イタリアやフランス製の時計や小物を使いこなしているのに、車となるとスイッチを切り替えてしまう方が多い。工業製品としての品質や性能といった機能性ばかりに目を奪われがちなのです。しかし、スペックや効率が語り尽くされ、あらゆる機能が飽和した現代において、最後に人の心を動かすのは、数値化できない『情緒』ではないでしょうか。そんな方々にこそ、マセラティの世界を知っていただきたい。そして『ライフスタイルの延長線上にある工芸品として、車を選ぶ喜び』を味わっていただきたいのです」
マセラティの美意識は、全モデルに共通するクラフトマンシップに顕著に表れている。スタイリッシュな流線形デザイン、レザーやシルクで仕立てられたシートが約束する極上の座り心地、そしてダッシュボード中央に設えられたアナログ時計。車内に貫かれたすべてのこだわりが、ドライバーの鋭い美的感覚を刺激するのだ。
購買者の中心年齢層は50代前半。ラグジュアリー・カーにふさわしいライフスタイルを身に着けた円熟と余裕、そして「自分だけの愉悦」を求める大人たちの審美眼が、マセラティを呼び寄せるのではないか。
排気音さえチューニング可能な「高い技術力」と「官能という基準」

マセラティの車は工芸品としての魅力に溢れる一方で、工業製品としての機能・性能も妥協がない。創業者であるマセラティ兄弟は自動車整備士であり、ブランド自体が「レーシングカーの整備会社としてスタートした」という歴史を持つ。
ちょうど100年前、自社の車をモータースポーツに参戦させたのを皮切りに、レーシングカーの製造販売を開始。現在までスポーツカーやレース専用モデルの開発を続けている。その技術力は推して知るべしだろう。
「洗練されたラグジュアリー・スタイルと、類まれな技術・性能を両立させるのは至難の業です。その秘訣は、マセラティの故郷・イタリアのモデナにあります。イタリアにはフィレンツェの革製品、ベネツィアのガラス工芸品といった特産品がありますが、モデナの場合は特産品がスーパーカーなのです」
マセラティのみならず、フェラーリ、ランボルギーニ、パガーニといったブランドをも生んだモデナは「モーター・バレー」の中心地であり、高い専門技術を有するプロフェッショナルが集結している。走行性能の詳細は言わずもがなだが、「マフラーの奏でる排気音さえ、音楽のように調律されている」というこだわりからも、マセラティが誇る技術の片鱗が伝わってくる。
「マセラティならではの、心地よく乾いた燃焼音が好きだと仰る方もいらっしゃいます。近年、電気自動車に注目が集まった反動か、エンジンの振動や排気音に愛着を示す方々が増えています。デジタル化が進み、車が効率的な移動手段へと受け取られがちな今だからこそ、五感を揺さぶる『官能性』こそが新しい時代の評価基準になる――マセラティは電気自動車も開発する傍ら、アナログな官能性をいかに心地よく感じていただけるかという信念を貫いています」
木村氏が「ラグジュアリー・カー」と言い切るマセラティ。価格帯は1,000万円以上と高額であるため、その魅力に気づいていても「なかなか手が届かない」と考えるドライバーは少なくないはずだ。
しかし2025年には、SUV「グレカーレ」に新たなエントリーグレード「エッセンツァ」が登場した。日本限定車であり、税込990万円という価格を実現している。機能の飽和した日常を抜け出し、人生を彩る「工芸品」を手にする。そんな贅沢な選択が、ぐっと身近になった。
そこで次回は、マセラティをより身近にするファイナンスプランを紹介したい。「初めてのマセラティ」を夢に終わらせたくないドライバーは、ぜひご注目いただきたい。
