ここまでで私的整理の戦略として4つの方法を解説しました。今回は、それらの方法における特有のデメリットや問題点を見ていきます。

「超長期による返済」は金融機関との交渉が難点

ここまで見てきたように、事業を再生する方法としては4つの戦略が考えられますが、そのうち①超長期による返済、②サービサーによる債権買い取り、③資本的劣後ローンを使った債務超過の解消には、それぞれ特有のデメリットあるいは問題点があります。まず、①超長期による返済については、金融機関から同意を得るための交渉のハードルの高さが大きな難点となるでしょう。

 

数年程度の単純なリスケであっても一般に渋られることが多いのに、それが10年以上の超長期となればまず簡単には応じてもらえないと思っていたほうがよいかもしれません。しかも、超長期による返済による再生を試みる場合には、1行だけではほとんど意味がありません。貸し手となっている金融機関すべてに、等しくそれを認めてもらうことが必要となります。

 

したがって、もし超長期による返済に応じてくれない銀行があれば、他の銀行に債務の肩代わりをしてもらうことも検討しなければなりません。しかし、そのための交渉は、返済期間を超長期にする場合にも増して、厳しいものとなることは間違いありません。

「サービサーによる債権買い取り」の問題とは?

次に、サービサーによる債権買い取りを利用した事業再生の問題点について確認しておきましょう。第3回目で解説したように、この方法には、金融機関のイニシアチブのもとで行われる場合と、債務者の側から提案する場合の2通りがあります。

 

まず、このうち、後者については金融機関と合意がまとまらなければ実行できません。金融機関としては、サービサーに低額で売ることよりも、債務者から全額を回収することを優先するでしょうから、合意を得るまでの交渉はスムーズに進まないかもしれません。また、いずれの場合にも、債務者は最終的にサービサーから債権を買い取ることが必要となります。そのための費用として、数千万円、場合によっては億を超える金額を用意しなければならなくなるかもしれません。

 

毎月の利子の返済にさえ苦しんでいるような企業にとっては、これだけの巨額の資金を調達することは大変な難題となるでしょう。したがって、この手法によって事業を再建できる中小企業は、現実には限られることになるかもしれません。また、企業から債権を買い戻したときには、債務免除益が発生します。その課税に対してどのように対応するのかも具体的に考えておく必要があります。

「資本的劣後ローン」の利用は危機意識を鈍らせる!?

3番目に取り上げた資本的劣後ローンを使った債務超過の解消にも、無視できない問題点があります。まず初めに指摘しておくと、この戦略は貸し手である金融機関にとっても非常に大きなメリットがあります。資本的劣後ローンが資本として扱われる結果、本来であれば貸倒引当金を充てなければならないはずの債権についてそれを避けることが可能となるからです。

 

そのため、金融機関の中には企業が再生に取り組む際、この手法を用いるよう積極的に勧めてくるところも少なくありません。しかし、資本的劣後ローンが資本として扱われるといっても、結局、借入金は借入金のままです。いずれは返済しなければなりません。

 

つまり、借金が減らずに存在しているという状況は何一つ変わっていないわけです。もしかしたら、経営者の中にはそのような状況であることを意識せず、「債務超過でなくなった」と喜んで根本的な解決策をとることを怠る人もいるかもしれません。赤字体質を改善する抜本的な改革が行われなければ、債務がどんどんと積もっていくことになるでしょう。そうなれば、結局は再び債務超過の状態に戻るだけです。

 

資本的劣後ローンを再生に利用することには、このように経営者が本来もち続けるべき危機意識を鈍らせるおそれがあるといえるのです。

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    本連載は、2014年10月25日刊行の書籍『引き継いだ赤字企業を別会社を使って再生する方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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