2024年の税制改正により、「相続時精算課税制度」はこれまでとは大きく異なる、使い勝手のよい制度へと生まれ変わりました。とりわけ注目されているのが、新たに導入された「年110万円の基礎控除」と「持ち戻し不要」というルールです。本記事では、相続税対策の専門家である岸田康雄税理士が、相続時精算課税制度の上手な活用方法と、見落とされがちな注意点についてくわしく解説します。
相続直前の「駆け込み贈与」も可能に
3.財産の価値が「贈与時の価格」で固定される
相続時精算課税制度の大きな強みは、相続時の評価額が「贈与時の価格」で固定される点です。特に、自社株(非上場株式)や、将来値上がりが見込まれる不動産などに有効です。
値上がりに贈与しておけば、その後どれだけ価格が上昇しても、相続税は贈与時の低い評価額を基準に計算されます。特に事業承継の場面では、株価が上がる前に移転しておくことで、大きな節税につながる可能性があります。
ただし、贈与後に価値が下がった場合にも相続税は「贈与時の価格」で計算されるため、“諸刃の剣”でもあります。
4.相続直前の「駆け込み贈与」にも対応
暦年課税では「7年ルール」があるため、相続直前の贈与はほぼ意味を持ちませんでした。しかし相続時精算課税制度の基礎控除内(110万円以内)であれば、この制約を受けません。
そのため、高齢の親からの資産移転や急に相続リスクが高まった場合の「駆け込み贈与」ができるようになり、相続発生のタイミングに左右されない柔軟な資産移転が可能になりました。
5.資産の可視化で将来の相続トラブルを減らせる
生前贈与を進めることで、資産の分配をあらかじめ整理できるというメリットもあります。
・誰にどの財産を渡すか
・どの程度の割合で分けるか
こうした点を事前に明確にしておくことで、相続発生後のトラブルを防ぐ効果が期待できます。特に、不動産や自社株のように分割しにくい資産については、生前の段階で整理しておくことが重要です。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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