人生設計を根底から狂わせた「自慢の息子の豹変」
「お前、一生働かないつもりか? ここにいたいなら働きなさい。奨学金も自分で返しなさい。それが筋ってもんだろう」
都内の中堅メーカーに勤務する高橋公一さん(仮名・62歳)の怒号が響き渡りました。場所は、自宅2階の角部屋の前。その中には、有名私立大学を卒業した息子、悠真さん(仮名・26歳)が半年以上も閉じこもっています。
公一さんは現在、定年後の再雇用制度を利用して働いており、年収は約400万円。妻と二人でコツコツ蓄えた老後資金は1,800万円、さらに退職金の残りを合わせれば、手元の資産は2,300万円ほどになります。
「65歳まで勤め上げれば、あとは年金と貯蓄で、穏やかな老後が送れるはずだ」――公一さんはそう確信していました。しかし、その人生設計を根底から狂わせたのが、他ならぬ自慢の息子の豹変でした。
期待の「高学歴エリート」が陥った、あまりに静かな暗転
悠真さんは幼少期から成績優秀で、都内の有名私立大学へ現役合格しました。しかし、3歳下には次男が控えており、教育費の重なりを考え、悠真さんとは高校時代から奨学金を借りて進学することを約束していました。
日本学生支援機構から月5万円、4年間で約240万円の奨学金を借り、学費と生活費の足しにしたのです。
大学卒業後、悠真さんは大手企業に就職。初任給も高く、家賃補助があるからと一人暮らしを始めた息子に、公一さんは「これで一安心だ」と胸をなでおろしたといいます。
ところが、社会の壁は想像以上に厚いものでした。完璧主義でプライドが高かった悠真さんは、現場での泥臭い人間関係や、上司からの細かな指摘に耐えられませんでした。
「あんな上司の元では働けない。自分はもっと価値のある仕事ができるはずだ」
そう言い1年足らずで退職。2社目に挑戦するも、そこでも数ヵ月で挫折しました。
お金がないと息子が実家に戻ってきたとき、「少し休めばまた働き出すだろう」と、軽い気持ちで受け入れた公一さんでしたが、それが、出口のないトンネルへの入り口でした。
