なぜ修繕積立金が不足してしまうのか
最大の原因は「新築時の販売方法」
修繕積立金不足の大きな原因は、新築マンションの販売方法にあると指摘されています。平成20年以前に建設されたマンションでは、新築時に作成される長期修繕計画の期間がわずか25年でした。そのため、築30年以上で必要となるエレベーター、機械式駐車場、給排水管などの高額な更新工事費用が計画に織り込まれていなかったのです。
新築時の修繕積立金が50円から70円/㎡だった時代のツケ
現在の修繕積立金ガイドラインでは、1平方メートルあたりの単価の中央値は約300円ですが、当時の新築マンションでは50円から70円という低水準が一般的でした。修繕積立金の単価とは、マンション1平方メートルあたり毎月いくら積み立てているかを示す指標です。
たとえば、50平方メートルの住戸で単価が300円なら、毎月1万5,000円が修繕積立金となります。実際、最近まで50円から70円という低水準で売り出されていた新築マンションも存在します。
デベロッパーは販売価格を抑えるため、当初の修繕積立金をできるだけ低く設定し、将来段階的に値上げする方式を採用していました。そのため、新築購入後5年ほど経過し、30年スパンの長期修繕計画を改めて作成すると、修繕積立金が3倍から4倍に跳ね上がるケースが続出し、国土交通省には多くの苦情が寄せられました。
国土交通省が平成20年にガイドラインを公表した意味
こうした背景を受け、国土交通省は平成20年に「長期修繕計画標準様式ガイドライン」を公表し、適正な修繕積立金の設定を促すようになりました。しかし、長期修繕計画はあくまで修繕工事のキャッシュフローを示す計画であり、計画に基づいて自動的に修繕積立金が見直されるわけではありません。修繕積立金の引き上げには総会決議が必要であり、合意形成が不可欠です。
ところが、多くのマンションでは総会に上程する前に反対運動が起きたり、理事長が面倒な議題を先送りしたりすることが多く、築30年以上経過してようやく不足に気づくケースが少なくありません。気づいたときには組合員の多くが高齢となり、年金暮らしの方も増え、必要な引き上げ幅が3倍どころか5倍から7倍となることもあります。
こうなると合意形成はさらに困難となり、管理不全に陥るリスクが高まります。まさに、寓話「アリとキリギリス」のキリギリスのような状態です。
