理事会では「ホテル代は個人負担」案まで
さらに、理事会内部でも意見が割れてしまいます。当初は「保険で賄える」と考えていた一部の役員が、保険適用不可とわかった途端、こう主張し始めました。
「ホテル代や医療費は、被害住戸の自己負担にすべきだ」
「今後、似たような事故が起きた場合も同様の扱いにする」という決議案まで出ています。しかし、今回の事故は共用部分の故障が原因であり、管理組合が“加害者”となる構図です。
Aさんは「このような決議は法的に認められるのか」「一般のマンションではどのような対応をしているのか」と悩んでいます。
【専門家が解説】6割のマンションで修繕積立金が不足──管理不全化が進む“静かな危機”
6割のマンションで修繕積立金が不足している現実
国土交通省の最近の調査によると、日本のマンションの約6割で修繕積立金が不足していることが明らかになっています。その影響は築後40年を超えるマンションで顕著であり、共用部分である外壁の剥落、鉄筋の露出や腐食、給排水管の老朽化など、生命や身体、財産に直結する深刻な問題を抱えるケースが増えています。
築40年超のマンションで深刻化する“ハードの劣化”
マンションでは、足場を組んで外壁補修やバルコニー、廊下、階段の補修を一体的に行う大規模修繕工事を12年から15年周期で実施することが一般的です。しかし国土交通省の調査によれば、築30年以上のマンションの約2割、築40年以上ではさらに多くが、適時かつ適切な大規模修繕工事を実施していない状況にあります。
激しい気象災害が老朽化マンションを直撃
近年はゲリラ豪雨や線状降水帯の発生により、激しい雨が降ることが増えました。その結果、外壁や屋上からの漏水事故が多発しています。また、給排水管の更新工事は国土交通省の長期修繕計画で概ね築30年での実施が想定されていますが、これを行っていないマンションも多く、専有部分への漏水事故も増加しています。
漏水事故の増加で“共用部損害保険”の保険料が急騰
外壁や屋上からの漏水、配管からの水漏れによる被害は、多くの場合、各マンションが加入している「マンション共用部損害保険」の保険金で補修されます。そのため、保険金支払いが増加し、共用部損害保険の保険料が急騰しています。
多くのマンションは割安な5年契約の一括払いを採用していますが、更新時に保険料が1.5倍から2倍に跳ね上がったという例も珍しくありません。共用部損害保険料は管理費会計の支出の上位を占めるため、管理組合の財政を圧迫し、管理費不足の傾向が強まっています。つまり、大規模修繕工事を長期修繕計画に基づいてしっかり実施しているマンションや築年数の浅いマンションであっても、古いマンションの事故増加の影響を受けているということです。
