金融資産と孫への送金
孫への学費や生活費の送金は、原則非課税で行うことができます。ただし、口座に貯め込むだけではなく、実際に生活費や家賃に使われていることを契約書や引き落とし履歴で証明することが必要です。今後は、父親から孫へ直接送金する形が最も安全です。むしろ学費などを直接振り込む形が望ましいのですが、目的を明確にした送金を行うことで、後々のトラブルを防ぎ、孫の生活を支える確実な方法となります。
家族間の調整と納得感
兄には体調不安や金銭管理能力への懸念がありました。このような場合、まとめて一括で財産を渡すよりも、段階的に分配したり、管理型で承継したりするほうが現実的です。相続は「公平」にすることだけが目的ではなく、家族全員が納得できる形に設計することが重要です。この納得感が、将来の争いを未然に防ぐ最大のポイントになります。
面談で整理した手順
面談では、具体的に次の順序で進めることが決まりました。まず、養子縁組届を提出し戸籍を取得します。次に、固定資産税通知書や父母の確定申告書を確認し、金融資産の概算を把握します。その情報をもとに相続税試算を行い、遺言原案を作成して家族全員と共有します。この手順を着実に進めることで、初めて「安心」が見えてきます。
養子縁組の実行と意義
今回の面談で最初のポイントとなったのは、長女の息子を父親の養子にすることでした。相談に来られた段階で、長女ご本人も養子縁組の必要性を強く認識されており、幸い家から離れた大学に通っているため、普段は同居していません。そのため、学校が休みのタイミングで帰省し、養子縁組を実行することができました。
これにより、孫は法的に正式な相続人となり、遺言書においても孫の立場で財産を承継させることができるようになりました。
養子縁組前の法定相続人は母と長女、長男の3人でしたが、養子縁組後は孫が加わることで4人となり、相続設計の自由度が格段に上がりました。法定相続人が1人増えることで基礎控除が増え、相続税の圧縮が可能になります。
孫養子の相続税は2割増しではありますが、将来的に不動産を誰が承継するかを具体的に設計しやすくなり、家族全員が安心できる形を作ることができました。
手続き自体は市役所で届出をすれば可能ですが、重要なのはタイミングです。ご両親は高齢で、記憶力の低下も見られるため、「今すぐにする」ことが最大のリスク対策となります。養子縁組を実行することで、孫も遺言書に立場として記載でき、安心感が格段に増しました。
まとめ
Tさんの父親の対策は最初のテーマの養子縁組ができましたので、これから遺言書、つぎに不動産対策というステップです。いくつかの課題がありますので、1つずつ整理し、ご家族で共有、納得いただきながら、進めています。
今回の面談で痛感したのは、「まだ大丈夫」と思っている時点が、実は最も危険であるということです。ご両親は高齢で記憶力も低下し、必要書類も所在不明のものがあります。さらに家族間には認識のズレがあり、遺言書がなければ将来の争いは避けられません。
相続対策とは、単なる税金対策ではありません。人間関係の設計、財産の流れの設計、時間との戦い、すべてを含めた総合設計が必要です。今回のケースでは、養子縁組を実行したことで孫も正式に相続人として立場を持ち、遺言書にも反映できるようになりました。これにより家族全員が納得できる安心感が生まれ、相続設計の大きな一歩となりました。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
