「見積書を見て、泣きました」
決定打となったのは、ある日の郵便でした。
浄化槽の定期点検の際、業者から「配管に不具合がある」と指摘されました。後日届いたのは、清掃費と補修工事を合わせた見積書でした。
金額は十数万円。持ち家の修繕としては珍しい額ではありません。ただ、年金月12万円の暮らしの中で、突然まとまった支出が生まれることは、和子さんにとって大きな負担でした。
「見積書を見て、泣きました」
大げさではなく、本当に涙が出たといいます。毎月の年金から食費や光熱費、ガソリン代を引けば、自由に使えるお金はほとんど残りません。そこに突然の修繕費が乗ってくると、気持ちが一気に追い込まれたのです。
「安く暮らせると思って来たのに、何が安かったんだろうって」
住み替えや移住では家賃などの固定費が減ることもあります。
一方で、持ち家の維持費や地域特有の費用、車の維持費、医療機関までの交通費など、新たに発生する負担も少なくありません。とくに高齢期の住み替えでは、物件の価格だけでなく、その住まいを無理なく維持していけるかどうかが重要になります。
和子さんも、今は何とかやりくりを続けています。ただ、「次に大きな修繕が来たらどうしよう」という不安は消えないといいます。
「今はまだ動けるから何とかなる。でも、あと5年後、10年後のことはわかりません」
地方移住そのものが失敗だったと言い切るつもりはないそうです。静かな環境や広い家に救われた面もありました。
ただ、老後の住み替えでは、物件価格や家賃だけでなく、その土地で暮らし続けるための費用まで見ておかなければならない――。和子さんは、移住先で届いた一枚の見積書を通して、その現実を思い知ったのでした。
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