「頼れる家族がいない老後」に、どう備えるか
よし子さんのケースは、決して他人事ではありません。ファイナンシャルプランナーとして、家族に頼らない老後設計のポイントを3つお伝えします。
1.年金だけで暮らせる支出構造を作る
よし子さんのように月12万円の年金であれば、住居費の負担がない持ち家は大きな強みです。問題は医療費と修繕費。自治体の高額療養費制度、住民税非課税世帯への減免措置など、使える制度を早めに確認しておくことが重要です。よし子さんにも、地域包括支援センターへの相談を勧めました。
2.介護費用の見える化
介護費用を漠然と恐れるのではなく、自分が要介護になった場合にいくら必要なのか、介護保険でどこまでカバーされるのかを具体的に試算してください。たとえば、要介護2であれば介護保険の自己負担は月3万~4万円程度。施設入所となれば特別養護老人ホームで月5万から15万円が目安です。自分の年金額と照らし合わせ、不足分を貯蓄で何年まかなえるのかを計算しておくだけで、漠然とした不安は大幅に軽減されます。
3.お金以外のつながりを複数持つ
よし子さんが5年間も嘘をつき続けた背景には、地域との関係が見栄で成り立っていたという構造的な問題があります。趣味のサークル、民生委員との関係、かかりつけ医との信頼関係。経済的な備えと同じくらい、困ったときに「助けて」といえる相手を持つことが、老後の最大のセーフティネットになります。
よし子さんはいまも、近所では「アメリカ赴任」の話を続けています。しかし先日、一つだけ変化がありました。地域包括支援センターの職員にだけ、初めて事情を打ち明けたのです。
「全部話したら、少しだけ楽になりました。でもね、息子が帰ってくるかもって、まだどこかで思ってるんです。親って、バカですよね」
その声は穏やかでしたが、かすかに震えていました。
子どもに頼れる老後が当たり前でなくなりつつあるいま、自分の暮らしを自分で守る備えは、早ければ早いほど選択肢が広がります。理想の家族像にとらわれず、現実の数字と向き合うこと。それが、誰にも依存しない老後への第一歩です。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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