(※写真はイメージです/PIXTA)

医学の進歩に欠かせない解剖学や生理学、あるいは法医学や公衆衛生といった「基礎・社会医学」。しかし、2004年の制度改革以降、これらの分野は若手医師のキャリアから遠ざかる一方です。臨床研修の義務化により、病院の各診療科による早期勧誘が常態化し、日本の医学の礎が揺らいでいます。本記事では、奈良県立医科大学理事長・学長の細井裕司氏の著書『挑戦する人か、文句を言う人か』(日経BP)より、医学界が直面する「研究医不足」の真因と、その対策として動き出した大学による教育改革の最前線を解説します。

早稲田大学内部からの反対

研究医養成コースの設置に向けて動いた我々に対し、立ちはだかった最初の壁は、早稲田大学内部からの反対だ。

 

教授の間から出された意見は「早稲田の理工系の人材を奈良医大に送り出せば、優秀な学生を失うことになるのではないか」という懸念だった。これに対し、私は「理工系の教育を受けた上で医師免許を取得した研究者の存在が、学術界全体にとっていかに大きな価値を持つか」を訴え続けた。

 

医学と工学、さらには社会科学の知見を兼ね備えた人材は、基礎医学や社会医学の発展に必ず大きな役割を果たす。そのような人材を輩出することは、早稲田大学にとっても「新たな価値創造」につながるはずだ。熱意を込めて説明を重ねた結果、反対されていた教授も理解を示され、遂に承認を得ることができた。

制度上の思わぬ壁

しかしこのあと、制度上の思わぬ壁が立ちはだかった。申請締め切りのわずか数日前、早稲田大学から一本の連絡が入った。文部科学省に最終確認したところ、「奈良医大と早稲田の2校だけでは研究医養成コースの認可が下りない」という。なんと連携校として少なくとも1つの医学部が入っていることが条件だったのだ。

 

この知らせを受けると、私は頭を抱えた。しかし、迷っている時間はない。私はすぐに動いた。同じ耳鼻咽喉科が専門で旧知の関係にあった関西医科大学の山下敏夫理事長・学長(当時)に電話をかけ、連携を依頼したのだ。締め切り直前の突然の依頼だったが、ありがたいことに山下先生の返答は驚くほど速かった。

 

「分かりました。協力しましょう」。即断即決の一言に、私は深く感謝した。即決いただけたのは、山下先生自身が理事長と学長を兼務されていたことも大きい。もし、経営トップの理事長と、学長が別の人物である場合、双方の許可を得なければならず、申請日に間に合わなかっただろう。

 

こうして、奈良県立医科大学・早稲田大学・関西医科大学という三者の連携による「研究医養成コース」の枠組みが整った。土壇場の協力で無事に申請でき、2011年12月、文部科学省から正式に認可を得るに至った。そして翌2012年4月、研究医養成コースはついにスタートを切ったのである。

 

注目のセミナー情報

【税金】3月11日(水)開催

【ヒロ税理士が徹底解説】
高所得者の所得税対策
「自己資金ゼロ」で短期償却
~年間400万円以上の手取りUPも~

次ページ研究医養成コースの対象となるのは、早稲田・奈良医大それぞれから選抜された学生

※本連載は、細井裕司氏による著書『挑戦する人か、文句を言う人か』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

挑戦する人か、文句を言う人か

挑戦する人か、文句を言う人か

細井 裕司

日経BP

公立の医科大学理事長・学長による内部組織改革の実話。 著者の挑戦の根源にあったのは、地方の単科大学である奈良医大のブランド力を上げたいという思いだ。しかし、数々の改革に対しては、必ずといっていいほど「反対する…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 石福金属工業のお知らせ 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧