(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人なんて自分には縁のないもの…。そう思い込んでいても、前順位の相続人の相続放棄で、自分に「お鉢」が回ってくることがあります。しかし、そんなときほど注意が必要です。残されているのは「借金だけ」というリスクがあるからです。不利益を被らないためにはどうしたらいいのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

突然「あなたが相続人です」と言われたら…

ある日突然「あなたは相続人です」という連絡が…。まるでドラマのような展開ですが、家族関係が複雑化・希薄化している近年、このような事態に直面する人は決して少なくありません。

 

相続において、民法で定められた相続人を「法定相続人」といい、この法定相続人には優先順位があります。

 

配偶者は常に法定相続人と定められており、それ以外で最も優先順位が高い第一順位は亡くなった方の子どもです。しかし、それらの相続人が相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされ、その結果、次の順位の相続人が相続人となります。

 

次の第二順位は、亡くなった方の親、さらに次の第三順位は、亡くなった方のきょうだいです。

 

自分には縁のないものと思っていても、面識のない親族や疎遠となったきょうだいから相続順位が回ってくることも、十分に起こり得るのです。

 

ただし、相続放棄によって順位が回ってくる場合は注意が必要です。残されている財産がプラスとは限らず、借金や保証債務など、いわゆる「マイナスの財産」だけが残っているケースも少なくないからです。金額によっては、それこそ「人生崩壊」となりかねません。

 

法律上の相続人に該当する人が、熟慮期間内に何らの手続きを取らない場合、原則として単純承認したものとみなされ、借金も含めてすべて承継することになります。そのため、速やかに対応することが重要です。

 

では、もし突然相続人になってしまったらどうすればいいのでしょうか?

手順1:状況を正確に把握

突然「相続人になった」という連絡を受けた場合、最初にすべきことは「状況の正確な把握」です。具体的には、被相続人(亡くなった方)の財産をすべて洗い出します。

 

●預貯金通帳

●借入金の契約書

●不動産の登記事項証明書

●保証契約の有無

●信用情報機関への照会

●株式や有価証券の確認

 

これらを丁寧に確認し、財産全体がプラスなのかマイナスなのか、その全体像を把握することが出発点となります。とにかく、数字をもとに冷静に判断することが大切です。

手順2:相続するかどうかを選択

財産の内容を把握したら、次に「相続するかどうか」を決めます。選択肢は、主に次の3つです。

 

1. 単純承認

プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継ぐ一般的な方法です。

 

2. 相続放棄

一切の権利義務を放棄し、「はじめから相続人ではなかった」とみなされる手続きです。

 

3. 限定承認

プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を弁済する、という方法です。なお、限定承認は相続人全員で共同して行う必要があるため、実務上ハードルが高い手続きです。

 

ここで重要なのが、いわゆる「3ヵ月ルール」です。

 

自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヵ月以内に、どの手続きを選択するかを決めなければなりません。この期間を「熟慮期間」といいます。この期間を過ぎると、原則として単純承認をしたものとみなされるため、注意が必要です。

手順3:相続放棄・限定承認の具体的手続き

相続放棄や限定承認を選ぶ場合は、家庭裁判所での正式な手続きが必要です。

 

「自分は放棄します」と宣言するだけでは、法的な効力はありません。必ず家庭裁判所に相続放棄申述書を提出し、戸籍謄本などの必要書類を添付して手続きを行います。

 

とくに相続放棄を選択する場合は、債権者からの請求を防ぐためにもできる限り早めに手続きを進めることが重要です。

 

また、相続放棄した場合には、次の順位の相続人にその事実を伝えることも大切です。情報が共有されないと、次の順位の方が突然債権者から請求を受け、「なぜ自分が!?」と戸惑う事態になりかねません。トラブル防止のためにも、丁寧な情報共有が必要です。

手順4:専門家へ相談する

財産関係が複雑で判断が難しい場合や、3ヵ月の熟慮期間に間に合うか不安な場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

とくに限定承認は、書類も多く要件も厳格であるため、専門知識なしに進めるのは容易ではありません。判断に迷いがある場合は、無理をせず、専門家と一緒に進めることが安全です。

慌てず、期限内に正しい判断を

前順位の相続人が相続放棄をしていたのに情報が共有されず、債権者からの連絡によって初めて自分が相続人であることを知る、というケースは少なくありません。

 

そのような場合には、

 

1. まず現状を正確に把握する

2. 相続するかどうかを選択する

3. 必要に応じて家庭裁判所で手続きを行う

4. 迷ったら専門家に相談する

 

という流れで進めていくことが大切です。

 

どの選択をする場合も、3ヵ月の熟慮期間という期限があります。ご自身が不利益を受けないためにも、早めの対応を心がけてください。

 

繰り返しますが、相続放棄を選択した場合には、次の順位の相続人への情報共有も忘れずに。迷ったときこそ、専門家への相談が最も安全な選択肢です。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

 

 

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