「把握できていない不動産」を減らし、相続登記の漏れを防ぐ
「所有不動産記録証明制度」とは、登記官が、特定の人(被相続人など)が所有権の登記名義人として記録されている不動産を検索し、一覧化した証明書を交付する制度です。
相続登記義務化により、相続人は被相続人が所有していたすべての不動産について、原則として登記を行う必要があります。
しかし現実には、あとから「生前に把握していなかった土地」「遠方にある不動産」「名義変更されないまま放置されていた土地」が見つかり、登記漏れが生じるケースが少なくありませんでした。
この制度は、そういった「知らなかった不動産」を減らし、相続登記の漏れを防ぐことを目的としています。
制度が創設された背景
これまで不動産の登記記録は、土地・建物ごとに作成されていました。そのため、「この人が、全国でどんな不動産を持っているか」を横断的に調べる仕組みは存在しませんでした。
相続が発生した場合、相続人は、
●固定資産税の納税通知書
●権利証
●記憶や聞き取り
これを頼りに不動産をひとつずつ探すしかなかったのです。
その結果「一部の不動産が把握されないまま、相続登記がされずに放置される」という事態が発生し、問題視されてきました。
相続登記義務化とあわせて、「そもそも不動産を把握できる仕組みが必要だ」という考え方から、「所有不動産記録証明制度」が創設されています。
所有不動産記録証明制度の手続きの流れは「3ステップ」
所有不動産記録証明制度の流れは、「①請求 → ②検索 → ③交付」という3段階です。
①請求できる人・請求方法
請求できるのは、次の人です。
●所有権の登記名義人(個人・法人)
●その相続人その他の一般承継人
●上記から委任を受けた代理人
請求は、全国すべての法務局・地方法務局で、次のいずれでも可能です。制度開始当初は、交付まで2週間程度かかる場合があるとされています。
●窓口
●郵送
●オンライン
②検索の仕様(重要ポイント)
検索は、請求書に記載された条件をもとに、登記官がシステム上で行います。検索の基本ルールは下記の2つです。
●氏名(名称)の前方一致
●住所の市区町村または末尾5文字の一致
また、異体字については、文字を縮退させて検索する仕組みが用意されていますが、すべての異体字が網羅されるわけではありません。
【家族が知っておくべき点】
この制度は万能ではありません。検索条件が正確でなければ、不動産が抽出されない可能性があります。過去の住所や氏名を把握していないと、「実際には所有しているのに、証明書に出てこない」ということも起こり得ます。
③交付
検索結果をもとに、所有不動産記録証明書が作成・交付されます。該当不動産がない場合でも、「該当なし」という証明が交付され、手数料は返還されません。
必要書類と注意点
請求には、立場ごとに必要書類が異なります。
●本人の場合:印鑑証明書(期限なし)または本人確認書類
●相続人の場合:これに加えて、相続関係を証する書類
●代理人の場合:委任状(実印押印・印鑑証明書添付)
重要な注意点としては次のものがあります。
●委任状・印鑑証明書は原本還付されない
●オンライン請求は、必要書類もすべて電子提供が必要
費用はいくら?…検索条件1件・証明書1通あたりの価格
検索条件1件・証明書1通あたりの価格は下記のとおりです。検索条件を複数指定すると、その分、手数料も加算されます。
●書面請求:1,600円
●オンライン請求(郵送):1,500円
●オンライン請求(窓口):1,470円
家族・相続人が意識しておくべき実務ポイント
この制度は「とりあえず取れば全部分かる」制度ではありません。むしろ、
●被相続人の住所・氏名の履歴をどこまで把握できているか
●検索条件をどう設定するか
によって、結果が大きく左右されます。
相続人だけで判断するのが難しい場面も多く、制度を正しく使うための実務的判断が求められます。
重要な制度だが…必要事項を誤ると、狙った効果が得られない!?
所有不動産記録証明制度は、相続登記義務化を支えるための非常に重要な制度です。一方で、検索仕様や必要書類を誤ると、使ったのに不動産を見落とす、という本末転倒な結果にもなりかねません。
この制度は「不動産を見つける魔法の制度」ではなく、正確な情報を前提に、見落としを減らすための制度です。
相続が発生したとき、慌てて動くのではなく、制度の限界も理解したうえで、慎重に活用することが重要になります。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
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