現行制度、「本人の自己決定権」を過度に制限か?
現行の法定後見制度では、判断能力の程度に応じて「補助・保佐・後見」の3類型が設けられています。
とくに「後見」に該当すると、原則として後見人が広範な代理権を持ち、本人の法律行為は大きく制限されます。また、判断能力が回復しない限り制度の利用を終了できず、結果として事実上の終身制度となるケースもありました。
この点が、本人の自己決定権を過度に制限しているのではないか、という問題意識につながっています。
要綱案の柱① 3類型の廃止と「補助」への一本化
要綱案では、現行の3類型を廃止し、法定後見を「補助」に統一するとされています。
今後は、遺産分割や不動産処分などの個別の法律行為ごとに本人の同意を求め、家庭裁判所が必要に応じて補助人に代理権を付与する仕組みが想定されています。
これは、包括的に代理権を与えるのではなく、必要な場面・必要な範囲に限って支援するという考え方への転換といえます。
【家族が知っておくべき点】
今後は、「一度後見が始まったら、すべてを任せきり」という関係にはなりにくく、その都度、本人の意思確認や家庭裁判所の関与が前提になる可能性があります。家族にとっても、制度を「一任して終わり」ではなく、継続的に関わる場面が想定されます。
要綱案の柱② 「特定補助制度」の新設
要綱案では、判断能力を欠いているとされた人が、預金の払い出しや不動産取引など、法律で定められた11の重要な財産行為を行った場合、無条件で取り消すことができる「特定補助制度」を新設するとしています。
この制度を適用するためには、医師2人以上の意見が必要とされており、本人保護を強化する一方で、濫用を防ぐ仕組みも組み込まれています。
【家族が知っておくべき点】
本人が重要な財産行為を行った場合、後から「取り消せる可能性がある制度」が用意されることで、家族としては、事後対応の選択肢が増えることになります。一方で、医師の意見が必要となるため、日常的な金銭管理と、重要な財産行為の線引きを意識する必要があります。
要綱案の柱③「やめられる後見」への転換
補助人の解任理由についても見直しが行われます。
これまでの「横領などの不正がある場合」に加え、「本人の利益のために特に必要があるとき」が解任理由として明記されます。
【家族が知っておくべき点】
今後は、「不正はないが、本人にとって適切な支援とは言いがたい」という場合でも、見直しを申し立てる余地が制度上明確になります。家族が感じる違和感を、制度上どう位置づけるかが、より重要になります。
死亡後の事務処理に関する整理
施設入所契約の解約や未払い金の支払いなど、本人死亡後の相続財産に関する事務についても、生前に付与されていた代理権の範囲内で、補助人が対応できると整理されました。
これは、実務上曖昧になりやすかった部分を明確にする内容です。
【家族が知っておくべき点】
死亡後の初動対応について、「誰が、どこまでできるのか」が事前に整理されることで、相続開始直後の混乱を一定程度抑えられる可能性があります。
制度改正を前に、家族として考えておきたいこと
今回の要綱案は、あくまで改正の方向性を示したものです。今後の条文化や運用次第で、細部は変わる可能性があります。
ただ、少なくとも読み取れるのは、成年後見制度が「固定的な保護」から「調整可能な支援」へと性格を変えようとしている点です。
【家族が知っておくべき点】
●本人の意思確認が、これまで以上に重視される
●家族の関与は、開始時だけでなく継続的に求められる
●制度を「使い続ける」だけでなく「見直す」前提が明確になる
本人の状況に応じて「柔軟に調整する制度」へ再設計
成年後見制度は、本人を守るための制度であると同時に、家族にとっても大きな影響を及ぼす制度です。
今回の要綱案は、後見を終身的な枠組みから切り離し、本人の状況に応じて柔軟に調整する制度へと再設計しようとする動きといえます。
今後の法改正の動向を注視しつつ、家族としてどのように関わるべきかを、早い段階から考えておくことが重要になりそうです。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士
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