(※写真はイメージです/PIXTA)

全国の救急出動件数はこの10年で約29%増加し、救急医療はかつてない逼迫状況にあります。到着時間の遅延や搬送困難事案の増加など、現場への負担は増加する一方です。なぜこれほどまでに救急搬送は増えているのでしょうか。本記事は、緑風会病院の理事長であり、自らも医師として救急医療に携わる杉本瑞生氏の著書『つなぐ医療 地域における二次医療機関の使命』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、日本の救急医療が直面する課題について解説します。

救急搬送増加の要因は社会構造の変化

救急搬送件数の増加には、いくつかの社会的要因が重なっています。新型コロナウイルス感染症の流行によって一時的に生じた「受診控え」の反動もその一つです。コロナ禍では軽症時に救急要請を控える傾向が見られましたが、その反動で現在は「念のため」と救急車を呼ぶケースが増えています。特に夜間や休日など外来診療が限られる時間帯には、より安易に救急車に頼る傾向が強まっています。

 

また、地域によっては医師不足が深刻化し、夜間・休日診療を担う体制が不十分になっています。かかりつけ医を持たない人が体調悪化時に自力で受診できず、救急要請に頼らざるを得ない例も少なくありません。加えて、軽症でも救急車を呼ぶケースが増えていることや、地域医療構想に伴う病床削減で受け入れ余力が減少していることも、現場の逼迫に拍車をかけています。

 

しかし、こうした要因以上に大きな影響を及ぼしているのが高齢化です。総務省の統計によれば、救急搬送された患者のうち65歳以上が占める割合は2004年の42.5%から2024年には63.3%へと上昇し、現在では搬送患者の約3人に2人が高齢者となっています。

 

出典:総務省「令和6年中の救急出動件数等(速報値)」 出所:『つなぐ医療地域における二次医療機関の使命』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋
[図表3]年齢区分別の搬送人員と構成比の5年ごとの推移 出典:総務省「令和6年中の救急出動件数等(速報値)」
出所:『つなぐ医療 地域における二次医療機関の使命』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋

 

高齢者は複数の持病を抱えることが多く、軽い体調の変化が重症化につながりやすい特徴があります。転倒などによる骨折や、季節ごとの感染症や熱中症でも、命に関わるケースが考えられるのです。加えて、多くの薬を服用する高齢者は、副作用や薬の影響による体調急変も見逃せません。

 

さらに、認知症の増加も救急搬送を押し上げています。症状をうまく訴えられなかったり、服薬や体調管理がうまくできずに容体が悪化したりすることで、救急要請につながるケースも少なくないのです。

 

このように、コロナ後の受診行動の変化や医師不足なども背景にはありますが、救急搬送の増加を最も大きく押し上げているのは、やはり高齢化であることは間違いありません。

 

 

杉本 瑞生

医師
医学博士
緑風会病院 理事長

※本連載は、杉本瑞生氏の著書『つなぐ医療 地域における二次医療機関の使命』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、解説します。

つなぐ医療 地域における二次医療機関の使命

つなぐ医療 地域における二次医療機関の使命

杉本 瑞生

幻冬舎メディアコンサルティング

「救える命」を一人でも多く―― 地域医療の最前線で、二次救急が果たすべき使命とは 大阪市平野区で救急医療を担う医師が語る 地域とともに命を支え続けてきた現場の挑戦と歩み 全国的に深刻化している「救急患者のた…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 石福金属工業のお知らせ 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧