危機に直面する救急搬送
日本の救急医療は、かつてない危機に直面しています。その理由の一つは、救急車の出動件数の増加によって、救急の現場に大きな負担がかかっていることです。
総務省消防庁が発表した統計によると、2024年の全国救急出動件数は約772万件を記録し、過去最多を更新しました。これは1日平均で約2万件、つまり4秒に1回のペースで救急車が出動している計算になります。
10年前の2014年には救急出動件数が約598万件だったことと比較すると、10年で174万件、実に29%も増加しているのです。
救急車の稼働台数は限られていますから、出動件数が増加すると、即座に対応できず到着が遅れるケースが増えます。2023年の平均到着時間は10.0分で、10年前の8.5分と比べて2分近く遅くなっています。たった2分と思われるかもしれませんが、救急現場ではこのわずかな差が患者の予後を左右することも少なくないのです。
問題は到着時間だけではありません。救急隊が現場に到着しても、患者の受け入れ先となる医療機関がなかなか見つからず、複数の病院に断られることが頻発しているのです。総務省の調査では、救急隊が医療機関への受け入れ照会を4回以上行い、かつ現場滞在時間30分以上のケース、いわゆる救急搬送困難事案が全国で年間6万件を超えています。
この過密な状況によって、1台の救急車が拘束される時間が長くなると、別の救急事案への対応が遅れることになります。一刻を争う救急医療の現場にとって、看過できない状況です。
救急搬送を受け入れる医療機関側にも事情があります。多くの病院では、救急患者を受け入れたくても、病床が満床で物理的に受け入れられない状況が続いています。
また、医療従事者が少なく専門医が不在のため適切な治療を提供できず、やむを得ず受け入れを断るケースも少なくありません。このような危機的な状態は、地方だけでなく都市部でも起こりうる現実となっているのです。都市部といっても、医療資源が集中する中心部と、その周縁部とでは状況が異なるからです。


