(※写真はイメージです/PIXTA)

食料品の消費税を2年間ゼロとし、その後に給付付き税額控除を導入する――この政策方針は、単なる物価高対策や景気刺激策にとどまるものではありません。それは、日本が長年直面してきた「税と社会保障の再設計」という構造的課題に対する1つの到達点ともいえます。少子高齢化の進行、消費税率引上げをめぐる政治的停滞、そして社会保障財源の確保という難題の積み重ねの中で、なぜ給付付き税額控除という選択肢が浮上したのか。その歴史的経緯と政策的背景を整理する必要があります。

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消費税をめぐる歴史的経緯

そもそも、日本における福祉と税制の在り方は、少子高齢化という不可避の現実を前提に、25年以上にわたり議論されてきました。特に2001年の小泉内閣成立以前から、その方向性は模索されていました。

 

1993年8月には、細川内閣が税率7%の「国民福祉税」を発表しましたが、世論の反発などを受けて撤回されています。1997年4月には橋本内閣において消費税率が3%から5%へ引き上げられました。

 

その後、長らく税率5%の時代が続きましたが、この間に景気後退やデフレが進行し、消費税増税への慎重論が強まりました。福祉財源を確保する必要性は認識されつつも、増税による景気への悪影響が懸念されたためです。

 

次に消費税率が8%へ引き上げられたのは、2014年4月1日の第二次安倍内閣下でした。しかし、この増税後も経済の足取りは重く、再増税の議論は政治的に難しい局面が続きました。

社会保障と税の一体改革の流れ

税率引上げが事実上凍結されるなかで、別のアプローチが模索されました。それが、社会保障と税の一体改革、そして給付付き税額控除の議論です。

 

2007年11月、福田内閣当時の税制調査会答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」において、「いわゆる『給付付き税額控除』の議論」という項目が設けられました。2009年度の自民党税制改正大綱でも同制度は取り上げられています。

 

さらに、野田内閣時代の2012年5月28日の税制調査会資料では、諸外国における給付付き税額控除制度の事例が整理されました。そして2012年8月、三党協議による議員立法として社会保障改革推進法が成立し、社会保障と税の一体的な見直しが制度的に位置づけられました。

他の選択肢との比較

低所得者層への支援策としては、給付付き税額控除以外にも選択肢が存在します。たとえば、一定所得以下の者に給付を行う「負の所得税」や、全国民に無条件で一定額を支給する「ベーシックインカム」といった制度です。

 

それにもかかわらず、給付付き税額控除が選択肢として有力視された背景には、諸外国での導入実績があること、税務執行の枠組みの中で制度設計が可能であること、そして所得再分配効果を比較的精緻に調整できる点が評価されたことがあると考えられます。

 

税制面でも、富裕層に有利になりやすい所得控除ではなく、低所得者層に直接的な効果を及ぼす税額控除を活用する点に、政策的意図が明確に示されています。

なぜ「食料品ゼロ税率」なのか

今回示された「食料品の消費税を2年間ゼロにする」という措置は、物価上昇への即効的な対応として位置づけられます。しかし、それはあくまで時限的措置であり、恒久的な制度としては給付付き税額控除へと移行する構想が示されています。

 

これは、消費税の逆進性を一時的に緩和しつつ、最終的にはよりターゲットを絞った再分配制度へ移行するという二段構えの政策設計と理解できます。すなわち、広く薄く負担を軽減する段階から、必要な層に重点的に支援を行う段階への転換です。

今後の課題

今後の最大の課題は、対象者の範囲をどこまで絞り込むのか、そしてその規模に見合う財源をどのように確保するのかという点にあります。

 

給付を広げれば財政負担は増大します。一方で、対象を絞りすぎれば再分配効果は限定的になります。公平性、効率性、財政の持続可能性をいかに両立させるかが制度設計の核心です。

 

少子高齢化が進行し、生産年齢人口が減少する中で、税と社会保障の再設計は避けて通れない課題です。食料品ゼロ税率から給付付き税額控除への移行構想は、その長年の議論の延長線上にある政策的試みとして位置づけられます。

 

重要なのは、短期的な対策と中長期的な制度改革をどのように接続するかという視点です。今回の提案は、その接続点を模索する一つの政治的回答といえるでしょう。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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