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物価高対策を巡る基本構図
現在検討されている施策は、消費税の減税、給付付き税額控除の実施、社会保険料の引下げなどです。いずれも家計負担を直接軽減する効果が期待されます。
しかし同時に、減税や保険料引下げは財政収入の減少を意味します。低所得者層への給付拡充を行う場合には、追加的な財政支出も必要になります。その結果、法人税や富裕層課税の強化といった歳入面の議論を避けることはできません。物価高対策は、歳出拡大と歳入確保をいかに両立させるかという構図の中で議論されるべき課題です。
社会保障と税制改革の歴史的経緯
今回の議論は、足元の物価上昇だけに起因するものではありません。約25年前、経済財政諮問会議において打ち出された「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」を起点に、医療保険、年金制度、介護保険制度の見直しが進められてきました。
その後の政権を経て、民主党政権下では「社会保障・税の一体改革」が進められ、2012年には社会保障改革推進法が成立しました。これは、社会保障を所管する厚生労働省、財政を担う財務省、地方財政を所管する総務省の調整を必要とする大きな政策課題です。
したがって、今回の物価高対策も単なる減税論にとどまらず、社会保障制度全体の持続可能性という長期的視点から検討される必要があります。
消費税減税か、社会保険料引き下げか
高市首相は、消費税減税と給付付き税額控除を組み合わせる方針に言及しています。一方、日本維新の会やチームみらいは、社会保険料の引下げを優先すべきと主張しています。
多数を占める自民党の方針が優先される可能性は高いとみられますが、社会保険料の引下げを実現するためには、医療・介護費の抑制や年金制度の見直しが不可避です。いずれの政策を選択するにしても、社会保障制度の構造改革という重いテーマから目を背けることはできません。
軽減税率と地方財政への影響
仮に食品をゼロ税率とした場合、テイクアウトと外食の区分といった技術的な問題が生じます。現在の軽減税率8%は、国税6.24%と地方消費税1.76%で構成されています。地方消費税は地方自治体にとって重要な財源です。
食品ゼロ税率による減税額は年間約5兆円ともいわれていますが、その穴をどのように補うのかは明確ではありません。地方財政への影響を含めた制度設計が求められます。
求められる「メリハリ」のある解決策
今後、議員や有識者で構成される国民会議において幅広い議論が行われる見通しです。課題は多岐にわたりますが、短期的な家計支援と中長期的な財政健全性をいかに両立させるかが最大の焦点です。
単なる人気取りの政策ではなく、制度全体の持続可能性を見据えたメリハリのある解決策が、今まさに求められています。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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