(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では、所得税と住民税を合わせた最高税率が55%、相続税も最高税率55%と、先進国のなかでも高い水準にあります。財源確保などを理由に「富裕層への課税強化」の声が上がるなか、最高税率を上げることははたして可能なのでしょうか。戦後日本の「税制」の歴史を踏まえたうえで、税率引き上げをめぐる議論の本質についてみていきましょう。

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最高税率93%だった時代も…日本の「税率」をめぐる歴史

現在の所得税制度を形づくった「昭和22年度所得税法」

日本の戦後税制において大きな転換点となったのが、昭和22(1947)年度の所得税法です。同法では「申告納税制度」が導入され、国が税額を決める仕組みから、納税者が自ら計算して申告する現在の方式へと移行しました。このため、戦後の所得税史のなかでも特に大きな意味を持つ改正とされています。

 

ただしこの改正は、それ以前の「賦課課税制度」で税収の確保に時間を要したことから、当時の厳しい財政事情のもとで採られた“苦肉の策”であったとの見方もあります。

 

昭和22年度所得税法第13条には税率が定められており、課税所得100万円を超える部分について「最高税率75%」が適用されていました。「国の課税権に照らせば、財政状況に応じて最高税率を引き上げること自体に、理論上問題はない」と考えられていました。

 

さらに、昭和49(1974)年度には所得税の最高税率が75%、税率区分は19段階に及び、地方税を合わせた最高税率は93%に。

 

当時は、いわゆる「長者番付」と呼ばれる高額所得者の公示制度(昭和25[1950]年~平成17[2005]年)が存在しており、その常連で第1位となっていたのが、松下電器(現パナソニック)の創業者である松下幸之助氏です。

 

つまり松下氏は、この93%という極めて高い税率の下で納税を行っていたということです。実際、松下氏は「税金が高すぎる」と周囲に漏らしていたとされます。

 

しかしその後、税制の国際化が進むにつれ、高税率国から低税率国へ富裕層が移住する動きが顕著になります。こうした国際的な競争環境の変化を受け、各国は過度な高税率を維持しにくくなり、現在では地方税を含めた先進国の実効最高税率はおおむね50%前後に収れんしています。

米国51.8%、英国45%…日本の「55%」は高すぎる?

現在、日本の所得税と地方税を合わせた最高税率は55%です。これに対し、米国ではニューヨーク市が51.8%(連邦税・州税・市町村税を含む)、地方税のない英国では45%にとどまります。

 

また、所得税が課されないアラブ首長国連邦(UAE)が依然として富裕層に人気であることを踏まえると、税率引き上げに際しては、国際的な人材や資本移動への配慮が不可欠です。

 

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