(※写真はイメージです/PIXTA)


内閣府『高齢社会白書(令和7年版)』によると、65歳以上の一人暮らし高齢者は男性で18.3%、女性では25.4%と推計され(2025年時点)、その割合は今後さらに高まると見込まれています。家族と離れて暮らす高齢者にとって、日常のちょっとした体調の変化や事故が“命にかかわる問題”となるケースもあります。

深夜0時、「助けて…」と震える声

「はじめ、何かの間違いかと思ったんです。あまりに声が弱々しくて…」

 

そう語るのは、東京都内で暮らす会社員の岡本綾子さん(仮名・52歳)。その日、ちょうど寝ようとしていた深夜0時、彼女のスマートフォンに1本の着信がありました。画面に表示されたのは、郊外で一人暮らしをする86歳の母・澄子さん(仮名)からのものでした。

 

「“助けて…”って、かすれた声で。それだけ言って切れてしまったんです」

 

電話を折り返しても出ず、不安に駆られた綾子さんは、すぐに車を走らせ母のもとへ向かいました。

 

約1時間後、澄子さん宅に到着した綾子さんが目にしたのは、ストーブもエアコンもついていない、氷のように冷えきった室内で倒れかけていた母の姿でした。

 

「布団の中にいたんですが、手足が冷たくて。暖房の使い方がわからなかったのかと思ったら、“電気代がもったいないから”って…」

 

澄子さんは軽い脱水と低体温の症状を起こしており、命に別状はなかったものの、医師からは「あと数時間遅れていたら危険だった」と告げられました。

 

特に高齢者の中には、「好きじゃないから」と、必要な暖房や冷房を避ける人も一定数存在します。また、総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身世帯の消費支出は月平均約14.9万円。可処分所得の少なさから、光熱費の節約を優先する傾向も見られています。

 

綾子さんは、母とのやりとりを思い出しながら、後悔の念を口にしました。

 

「以前から“暖房はちゃんと使ってね”って言っていたんです。でも、“大丈夫よ”って返されると、それ以上は踏み込めなかった」

 

澄子さんは、戦後の貧しい時代を生き抜いてきたこともあり、「自分のことは自分で」「お金はなるべく使わない」という信念を貫いてきたといいます。

 

「でも、それが命を危険にさらすとは、思ってもいませんでした」

 

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