限界まで頑張り、地域医療を支え…スタッフたちの底力
それでも看護師たちは、懸命に務めを果たしています。私がコロナ病床の設置を決めたときに、自ら名乗りを上げてくれた看護師が何人もいました。
当時は、コロナを差別視する風潮があり、医療従事者と告げるだけで距離をおかれたり、子どもの保育を断られたり、親族から仕事を辞めるように言われることもあったと報道されていました。そのような時期に、自らの危険も顧みずに手を挙げてくれた看護師たちには、感謝してもしきれません。救急医療機関に期待される役割をよく理解してくれていたのだと思います。
医療技術の面で、二次救急医療機関には特有の難しさがあります。搬送されてくる患者の症状は実に多様で、骨折から心不全、肺炎から腸閉塞まで、あらゆる疾患に対応する必要があります。
しかし、すべての専門医をそろえることは現実的ではありません。そのため、限られた医師で可能な限り幅広い疾患に対応しなければならず、時には専門外の疾患も診る必要があります。これは医師にとって大きなプレッシャーとなりますし、医療安全の観点からも課題となることがあります。
また、患者の重症度の判断も重要になります。自分たちで対応できる症例なのか、それとも三次救急医療機関に搬送すべき症例なのかを、短時間で的確に判断する必要があるのです。
地域との連携も重要です。容易なことではありませんが、救急で受け入れた患者が回復したあとの適切な転院先や、在宅復帰のための調整を行う必要があるのです。
二次医療機関は、社会からの大きな期待と責任を担っています。地域住民にとって救急医療機関は頼みの綱です。限られた医療資源で、すべての要請に応えることは現実的には不可能な場合もありますが、私たちは「地域に必要とされる救急医療機関」としてあり続けるために、工夫と努力を重ねています。限られた資源を最大限に活用し、地域のニーズに応えることで、二次救急医療機関としての使命を果たしていきたいと考えています。
コロナ禍が落ち着いたあとには、一次救急医療や介護に近い対応を求められることも多くなっています。患者の平均年齢は着実に上がり、地域の高齢化率も上昇し続けているためです。
高齢であればあるほど、退院後の生活についても考慮しなくてはならないことがたくさんあります。一人暮らしで、自力での歩行がやっとという状態なら、退院しても生活にかなり困難が生じるため、多くの場合、介護サービスの利用が必要となります。私たちは、退院後も安心して生活できるようにサポートし、自宅で暮らすのが難しいと判断される場合には、高齢者向けの介護施設につなげています。
退院後の暮らしを支えるには、救急から療養、地域復帰までをつなぐ医療連携が欠かせません。「地域包括ケアシステム」はその基盤となるものですが、その出発点を支えているのが、私たち二次救急医療機関なのです。
杉本 瑞生
医師
医学博士
緑風会病院 理事長
