「金利2.5%」はもはや新常態か。衆院選の与党圧勝シナリオで迎える「円高・金利上昇」への歴史的転換点

「金利2.5%」はもはや新常態か。衆院選の与党圧勝シナリオで迎える「円高・金利上昇」への歴史的転換点

高市総理による衆議院解散宣言と、突如浮上した「食料品減税」。財政規律への懸念から市場では金利上昇と円安が加速しているが、このトレンドは永続的なものなのだろうか。Jトラストグローバル証券株式会社チーフ・インベストメント・ストラテジストの上田祐介氏は、物価上昇率を加味した「実質利回り」の動向に、市場の流れを劇的に変えるシグナルが隠されていると指摘する。3月末、10年債利回りが「2.7%」という臨界点を超えたときに起きる、為替と金利の地殻変動。投資家が今注視すべきシナリオを解説する。

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政権と専門家の間で真っ向から対立する「未来への信念」

政権サイドと財政規律派の最も大きな違いは、政策運営による経済成長の実現可否に対する信頼感にある。こうした考え方の違いは、もはや主義主張に属するものであって、この前提が異なると、今後の未来に生じ得る「経済スパイラル」も、まったく正負の方向性が真逆のものとなる。

 

最近の市場では、債券や為替市場の反応を背景に、「日本売り」や「信認」低下を土台とした不景気への負のスパイラルに関する論調が多くみられる。日本国債の市場価格の下落や、ドル円レートの円安傾向を受けた主張の多くは、従来型の財政規律派のスタンスを踏襲した考え方だ。こうしたスタンスは、現政権の考える経済成長や財政規律の考え方とは明らかなずれがある。以下の図表に両者のスタンスの差と、こうした議論の若干外側にいる日銀のスタンスの違いをまとめた。

 

政権サイドと財政規律派の最も大きな違いは、政策運営による経済成長の実現可否に対する信頼感にある、と弊社は考える。両者間には、下記のスタンスの差が存在する(図表3)

 

出所: JTG証券で作成
【図表3】 出所: JTG証券で作成

 

1.政策運営の成果に対する信頼感を持つ勢力:政策運営によって放漫財政に陥らず、効率の良い財政運営への移行が可能で、その結果、短期的には個人所得の実質増により消費増大による実体経済成長を達成し、中期的には人口動態の悪化(労働人口の減少傾向)も抑制できるとする考え方

 

2.財政規律を重視する勢力:政治体制がどの程度変わろうとも日本の政治や経済を抜本的に改善する施策はなく従来と同様の政策を維持しつつ歳出増だけが継続しやすいため、プライマリーバランスなど明示的な財政規律で管理すべき、とする考え方

 

こうした考え方の違いは、もはや主義主張に属するものであって、この前提が異なると、今後の未来に生じ得る「経済スパイラル」も、まったく正負の方向性が真逆のものとなる(図表4)

 

出所: JTG証券で作成
【図表4】 出所: JTG証券で作成

 

ここで示した通り、両者の間には明らかな断絶がある。その原点は、政治の自浄能力や今後の政策実現性に対する期待値の差とも言えるが、信念の違いともいえる。両者の間を埋めるものは結果しかない、と言えよう。

与党大勝なら4月以降、為替は150円台の円高へ

現役世代の負担を抑制し国家の成長を目指すための代替財源には、「増税」や「国債増発」だけに頼らない第3の財源、すなわち「歳出の見直しと再配分」が必要だ。こうした政策を進めるには、政権与党と政策的に近い政党が大勝するような選挙結果が前提となる。

 

仮に与党大勝シナリオが実現した場合には、4月以降の為替相場は、一方的な売りとはならず150円台前後までの円高が進みやすくなり、10年国債金利は一旦2.5~2.8%程度までのオーバーシュート後には2%台前半で落ち着きやすくなるだろう。

 

日本経済には、既に歳出増を際限なく広げる余裕はない。その中で、前述のように現役世代の負担を抑制し、国家の成長を目指すためにはそれに見合う巨額の財源が必要だ。それには「増税」や「国債増発」だけに頼らない財源、すなわち「歳出の見直しと再配分」を一定規模で確保することが重要だ。しかし、既得権益の削減は、日本の政治においてもっとも苦手な分野だ。また、これまでの日本の政治・経済運営を長年見てきた専門家が、口をそろえて実現不可能だと指摘する内容だともいえる。

 

現政権では、片山財務相の指揮下のもと、租税特別措置・補助金見直し担当室(いわゆる日本版DOGEの窓口)を内閣官房に設置した。同組織は、租税特別措置や高額な補助金、基金などの政策効果を横断的に点検し、効果の低いものは廃止に導くことを目的とする。同室では1月5日から2月26日まで、租税特別措置・補助金見直し担当室を窓口として、租税特別措置等、補助金及び基金を対象とした適正化と見直しに関する提案を募集している。ただし意見募集が終わった後に、現実に補助金等の削減を大幅に進めようとすると、相当な規模と圧力で政治的な障壁が立ちはだかることが予想される。

 

今回の衆議院選で、連立与党が大勝できるかどうかという点は、現政権が財政拡大だけではなく縮小分野についての十分なイニシアチブを握るために不可欠なものだ。よって、「責任ある積極財政」が実現できるか、「無責任でポピュリズム的な積極財政」に転落するのか、という判断を行う上でも、2026年の衆議院選挙の結果は、今後の相場にも影響する重要な判断材料となる。仮に、すべてが前向きに進むようがあれば、第4の財源となる経済成長が実現し得る。このイニシアチブを与えるかどうかは、本衆議院選挙の大義ともいえる。

 

もし与党が選挙で大勝すれば、当面は「良い経済スパイラル」を信じて政策が実行される可能性がある。ただし、こうした政策が仮に実施されても、経済政策は失敗する可能性は充分にあり、確実な未来が約束されるわけではない。ただ、異なる経済モデルへと進むためには、与党の大勝は必要条件となる。逆に、充分な議席が得られなかった場合には、与党内野党の反対もあり、歳出削減は進みにくくなるだろう。また野党が勝った場合にも、ポピュリズム的な放漫財政が進みやすい状況には変わりはないと考えられる。

 

もし政権与党と政策的に近い政党が大勝するような選挙結果が生じた場合、壮大な社会実験ともなる経済のリフォームが進められることになる。この場合には、金利・為替相場も、従来の常識とは異なる「新たな常態」のもとで正常化されることとなる。仮に与党大勝シナリオが実現した場合には、「日本版DOGE」による聖域なき歳出削減が現実味を帯び、これまで「バラマキ」への懸念から売られていた円に対して、財政健全化への期待が先行することになる。その結果、4月以降の為替相場は、一方的な売りとはならず150円台前後までの円高が進みやすくなり、10年国債金利は一旦2.5~2.8%程度までのオーバーシュート後には2%台前半で落ち着きやすくなるだろう。

 

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●記事内資料
*1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22D3S0S6A120C2000000/?msockid=1052d315ab5e637604a8c68caabd62bb
*2:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2026/0122agenda.html

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