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キャッシュレス化は、銀行口座を持たない低所得者に不利な構造
銀行口座を持たない層や、口座はあるもののサービスをなかなか利用できない層は基本的に現金を使う。それだけに、脱現金の動きは、こうした層にとって大きな問題となる。
銀行口座を持たない層は、銀行はもちろん、他の金融機関にも口座がない。銀行サービスがなかなか利用できない層は、銀行口座を持っているが、小切手現金化サービス業者など代替金融サービスも利用する。
年収1万5000ドル未満の「4分の1」は銀行口座がない
銀行口座を持たない層と、銀行口座は持っていても銀行サービスをなかなか利用できない層は、主に低所得者である。
米国では、年収1万5000ドル未満の人々の4分の1が、銀行口座を持っていない。裕福な人ほど、銀行口座を持っている可能性が高くなる。年収7万5000ドル超の人々は、ほぼ例外なく何らかのタイプの銀行口座を持っている。
なぜ銀行口座を持っていない人がいるのか。連邦預金保険公社(FDIC)が銀行口座を持たない人々を対象に、その理由を調査している。
銀行の営業時間などサービス上の問題を挙げる回答もあった。確かに夜勤者は昼は睡眠中のため、銀行に足を運ぶことが難しい。銀行が不便な場所にある点を挙げる回答もあった。遠隔地に暮らす人々は、なかなか銀行に行けない。
その他の理由としては、自身の所得が低過ぎるとか、銀行の手数料が高過ぎるといった経済的な理由が並ぶ※。銀行口座を持たない人々の間では、「口座維持費が高すぎる」、「銀行が遠すぎて不便」のどちらかを挙げる回答が多くを占めた。
※ 銀行口座を持たない層のデータは、Federal Deposit Insurance Corporation (2022) 別の推定は、FRBの「家計経済と意思決定に関する調査(SHED)」に基づく。SHEDによれば、6%が銀行口座を持っていない。これはFDICの調査の数値を若干上回っている。13%は口座を持っているが、小切手現金化サービス業者など、銀行以外の金融機関を使用している。銀行口座を持たない層の概要については、Boel and Zimmerman (2022)
こうした問題を解決しようと、数え切れないほどのフィンテック(ITと金融の融合)企業が、銀行口座を持たない人々に向けて、銀行と類似のサービス提供に乗り出している。
そのような技術を利用すれば、貧困などで銀行口座が持てない人々も含め、誰でも平等に金融サービスを利用する機会が確保される(このような状態を「金融包摂」という)と、フィンテック企業は謳っている。
だが、FDICの調査によれば、銀行を使わない人々は、ほかにも4つの理由を挙げている。
技術では解決できない…銀行を使わない理由
その4つとは以下のとおりだが、どの理由を見ても、フィンテック企業の解決策では、万人をキャッシュレス金融システムに移行させられないことがわかる。
・銀行に関わらなければ、プライバシー保護を強化できる。
・銀行を信用していない。
・口座開設に必要な身分証明書がない。
・過去の借り入れの返済履歴・信用取引履歴に問題があるために口座を開設できない。
銀行口座を持たない理由を挙げた人々のうち、プライバシー強化のために銀行には関わらないとの回答は約40%、銀行を信用していないとの回答も40%だった。口座開設に必要な身分証明書をそろえられないとの回答は約15%、過去の取引上の問題を挙げた回答が約15%である。
全部積み上げると100%を超えているのは、複数回答のためだ。この4つの理由のうち、最低でも1つを挙げた人は、およそ800万人に上り、世帯数で見ると300万世帯を超える。つまり、キャッシュレス推進のための最善の解決策をもってしても、依然として現金が必要な層、現金を使いたい層は、何百万人、何百万世帯に上るのである。
銀行口座の無償化も解決策にはならず
低所得層支援者の中には、フィンテックよりも優れた解決策があるとの声もある。それは、銀行口座を持たない数百万人に対して、銀行口座を無償で提供することだ。私が暮らす市では、貧しい子供たちに無償の昼食を支給し、貧しい成人向けには無償の住宅や無償の交通機関利用券を提供している。
では、低所得層に無償の銀行口座を提供できないのはなぜか。確かに、手数料支払いの問題は解決するのだが、銀行に不信感を持つ人々や、身分証・定住所がない人々の問題には対処できないのだ。
