(※写真はイメージです/PIXTA)

宗教法人制度は、本来、信教の自由を保障し、宗教活動の継続を支えるために設けられた。しかし近年、その制度が税制優遇を目的とした法人売買や資産移転に利用されている実態が明らかになりつつある。文化庁が危機感を示すなか、宗教法人の監視体制をどう構築するのか。制度の信頼回復に向けた議論が、いま避けて通れない局面に来ている。

傀儡の住職の存在

ある寺院からは傀儡の住職が宗教業務を行っているとの相談があった。とある実業家(すでに他界)が建立した寺院では、雇われ住職が法務を務めている。しかし、住職は寺院の預金通帳を見たことがなく、毎年の収支計算書など役所関係の報告を提出したこともないという。

 

住職の話では、寺院には実業家が残した多額の財産があるとの噂だが、役員会も開催されずに会計がどうなっているのか住職は知らされていない。このケースは、莫大な相続財産を宗教法人に寄付して相続税を免れ、傀儡の住職に法務を行わせて宗教法人の実態を偽装しているのではないかと筆者は判断している。

 

公益法人等に財産を移管して相続税を免れ、被相続人の死後には年間の寄付額を8,000万円以下に抑えることにより、税務署から監視されない『裏金』を作る手口として富裕層に広く知られている。

 

これらの行為は宗教法人の財務諸表をチェックする機関がないからだとの指摘がある。収益事業をしていない宗教法人は、年間収入が8,000万円以下なら税務署への申告義務がなく、源泉徴収漏れ以外の理由では税務署からの調査を受けることはない。

宗教法人の優遇税制を食い物に

そもそも宗教法人とは、宗教団体が自由で自主的な活動をするための基礎として、法に基づき設立される公益法人の一類型であり、法の定めるところにより、宗教団体のみがこの法人格を取得できる(第4条)。

 

法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることをその目的としている。(第1条)。 

 

拙著『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』にも掲載した「宗教法人がラブホテル経営で14億円の脱税」事件は、休眠宗教法人を買い取って悪さをしていた事案だが、その後も宗教法人の脱税報道には枚挙にいとまがない。

 

公益法人・学校法人は、財務諸表の公表が義務づけられて悪さをしにくくなったが、現在でも監視体制が弱い宗教法人を狙って、宗教法人を売る業者が存在している。宗教界にとって悲劇的なのは、多くの檀家寺が存続の危機にあるにもかかわらず、宗教法人の脱税事件として報じられることだ。

 

そもそも宗教法人法は、宗教活動以外の目的に法人格を利用する事態を想定しておらず、元来の宗教活動を継続・継承する意思のない第三者が法人格を取得する行為は法の目的に合致しない。このような事態が放置されてしまえば、宗教法人という仕組み自体への信頼の失墜を招くおそれがある。

 

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