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相続を「口約束」で済ませた結果…
「妹との“血のつながり”を信じたばかりに、1,500万円もの借金を背負わされ、家族までバラバラになるなんて……。一体、私のなにがいけなかったのでしょうか」
佐々木京子さん(仮名・52歳)は、数年前に他界した祖母の遺産トラブルを振り返り、力なく語ります。
本来、祖母の遺産を継ぐはずだった京子さんの父は、祖母が亡くなる数年前に他界していました。母もすでに亡くなっており、祖母が100歳近い大往生を遂げた際、相続権は孫である京子さん姉妹へと移っていました。亡き親に代わって子が継ぐ「代襲相続」となったのです。
そして相続の際、駅前の一等地にある「店舗付き住宅」を誰が継ぐかが問題になりました。本来ならそこに住んでいる妹が継ぐべきでしたが、専業主婦の彼女には重い相続税を払う蓄えがありません。
「結局、私が代表して引き受けることになったんです。妹家族にはそのまま2階に住み続けてもらい、1階の空き店舗の管理も任せました。『空き店舗はそのままにしておいてね』という口約束だけで、私は所有者としての責任をすべて妹に預けてしまったんです。それが地獄への入り口だとも知らずに……」
支払いを終え安心から一転、自宅に届いた「税務署」からの通達
仕事と育児に追われる京子さんは、遠方にある実家の管理を妹に任せきりにしていました。妹からの「店は空いたままだよ」という言葉を疑うこともなく、固定資産税だけを黙々と払い続けました。
そして、祖母の死から約8年。ようやく重い相続税の分割払いを終え、「これで一安心」と思っていた矢先、京子さんの元に1通の封書が届きました。
それは、税務署からの目を疑うような督促状でした。
「開封した瞬間、心臓が止まるかと思いました。そこには、私が長年不動産所得を隠していたという指摘と、多額の追徴課税が記されていたんです。不動産所得? 申告漏れ? なんのことかまったくわかりませんでした」
「税務当局は、名義人と実態が異なるこの状況を『悪質な所得隠し』とみなし、もっとも重いペナルティである重加算税を課す」といった内容を目にして、パニック状態になりながら妹に電話をかけると、衝撃の事実が発覚。
なんと、妹は京子さんに無断で、数年前から1階の店舗を勝手に貸し出し、賃料をすべて自分の懐に入れていたのです。
「一体どういうことなの! なぜ勝手に貸したの!」と妹に問い詰めると、悪びれる様子もなく答えました。
「空けておくのはもったいないでしょ。家賃収入はうちの生活費に消えたわよ。お姉ちゃんは家主なんだから、税金くらい自分でなんとかしてよ」
「法律上の責任」が引き裂いた夫婦の絆
法律上、不動産から発生した所得を申告し、税金を納める義務があるのは所有者である京子さんです。妹が勝手に得ていた利益のツケが、無申告加算税や延滞税を含めた1,500万円という巨額の請求となって京子さんにのしかかったのです。
この騒動は、京子さんの家庭をも崩壊させました。夫は冷ややかな目で、京子さんに離婚届を突きつけると同時に、こう言い放ちました。
「『家族だから』なんて言い訳で、管理もせず放置した結果がこれか。リスクを隠して家庭に持ち込んだ君を、もう信じることはできない」
結局、京子さんは追徴課税を支払うために、祖母から受け継いだ店舗付き住宅を二束三文で売却。しかし、所有者としての権利を主張しても「住む場所がなくなる」と激昂して退去を拒む妹家族との交渉は泥沼化。
最終的には、居座り続ける妹家族への立ち退き料の支払いと、税金納付期限が迫るなかでの「売り急ぎ」が重なり、一等地とは思えない安値での手放しを余儀なくされました。
手元に残ったのは、空っぽの預金通帳と、独りきりの生活でした。
「私はあの家を売って税金を払い、夫とも別れました。あのとき、妹に厳しく所有権を主張していれば、すべては防げたはずなんです。相続が終わったとき、私たちに残ったのは、血のつながりではなく、法律上の責任だけでした」
