(画像はイメージです/PIXTA)

事業承継は、単なる経営者の交代ではありません。本来の目的は、事業を「引き継ぐ」ことではなく、「長期的に存続させ、成長させていく」ことにあります。そのため、後継者には、先代が築いてきた事業価値の本質を理解し、環境変化に適応させながら発展させていく経営能力が求められます。経営戦略の再構築や経営資源の再定義、そして企業価値・事業価値を意識した意思決定が不可欠です。事業承継を経営戦略の観点から捉え直し、後継者育成や権限の委譲、イノベーション、企業価値評価といったテーマを通じて、事業承継の本質について公認会計士の岸田康雄氏が解説します。

後継者育成を支える“見えざる資産”

経営資源には、人的資源、物的資源、資金的資源、情報的資源があります。なかでも人的資源は、価値観や感情を持つ存在であり、単なる管理対象ではなく、戦略的なマネジメントが不可欠です。

 

また、市場で容易に調達できる資源と、そうでない資源があります。後者は企業固有の強みとなり、持続的な競争優位を生み出します。

 

特にファミリービジネスでは、伝統、文化、ブランド、暗黙知といった「見えざる資産」が事業価値の中核を成すケースが少なくありません。これらは事業承継を通じて蓄積され、長期的な競争力の源泉となります。

 

「権限の委譲」と「後継者育成」は車の両輪

事業承継とは、経営者が責任と権限を後継者に移譲していくプロセスです。この過程では、「権限の委譲」と「後継者育成」が不可欠となります。

 

創業経営者は強い情熱と成功体験を持つ一方、承継を先送りしがちな傾向があります。これに対し、2代目以降の経営者は客観性を持つ反面、既存資源への依存や、当事者意識の希薄化という課題に直面することがあります。

 

後継者育成においては、社外経験の積み重ねが重要です。他社での実務経験は、多様な視点を養い、自社を客観的に見る力を育てます。また、従業員との信頼関係構築にも大きく寄与します。

 

ステークホルダーとの関係構築が承継を支える

事業承継では、後継者が周囲から「次の経営者」として認知されることが重要です。従業員、取引先、金融機関、株主、地域社会など、さまざまなステークホルダーとの関係構築は、事業の安定と成長に直結します。

 

さらに、承継期はイノベーションの好機でもあります。後継者は、先代の築いた事業基盤を尊重しつつ、新しい発想やビジネスモデルを取り入れ、現代の経営環境に適応させていく役割を担います。

 

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