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箱根・伊豆の3億円物件を狙う本当の動機
中国人による日本の不動産購入の背景には、在留資格の取得も見え隠れする。買い手となる中国人と、売り手となる日本人を長年仲介してきた「ホテル旅館経営研究所」(東京都中央区)の辻勇自[つじゆうじ]所長が実情を明かす。
「私の経験上、ほとんどの中国人がビザを取るために、日本の不動産を狙って購入しています。日本人は不動産を買う時にはたいてい、利回りを求めますが、中国人は最終的には永住権を含め、ビザ取得を狙っています」
辻氏によると、中国人は日本に長期で滞在するビザ取得のためだけに、日本で古くなったり、後継者がいなくなった旅館などを物色し、安価で買い取ったりするのだという。日本で一から会社をつくるよりも、この方法が手っ取り早く、「経営・管理ビザ」取得もしやすくなるからだ。日本で銀行口座をつくりやすいなどのメリットもある。
彼らが狙う「経営・管理ビザ」は、事業所の確保や2人以上の常勤職員、または500万円以上の出資という条件(2025年9月時点)を満たす必要がある。ただこの条件も、中国人富裕層にとっては、特段高いハードルではない。結果、「経営・管理ビザ」を持つ中国人は2万1740人(2024年末時点)と、10年前の約3倍にまで急増している。
資金に余裕がある中国人なら、より行動も大胆になる。実際、ホテル旅館経営研究所の顧客である中国人富裕層の一人は現在、日本永住を視野に、箱根で買収可能な旅館を物色中だという。
中国人が好むエリアは箱根、伊豆、熱海など富士山周辺が相場。温泉があり、富士山を一望できる場所だ。中でも価格が3億円以上で、施設の手入れが行き届いている営業中の物件なら、さらに人気があるという。
「中国人にとって、こうした物件を日本人オーナーから買うのは、ブランド価値向上にもつながっています。日本人は真面目で、物件にも瑕疵[かし]がないと考えられているからです」
辻氏はそう説明する。
こうした状況は、旅館やホテルなど、後継者不足や日本人の買い手不足に悩む売り手側からみれば、渡りに船にもなっている。そのため辻氏は「今後も中国人による旅館やホテルの買収はまだまだ増え続けるだろう」と読む。オーナーが中国人に代わっても、従業員はそのまま雇用され、途切れることなく営業が続くケースは多い。日本の旅館やホテルの買収はまだまだ、こうして日本人の目に触れないところで静かにかつ、着実に進んでいくのだろう。
日本経済新聞取材班
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