中流家庭の28歳女性「中国に帰ることはもう考えていません」…日本の永住権は「美大」で買える? 中国人留学生が殺到する“ガバガバな認定ハードル”の衝撃

中流家庭の28歳女性「中国に帰ることはもう考えていません」…日本の永住権は「美大」で買える? 中国人留学生が殺到する“ガバガバな認定ハードル”の衝撃
(※写真はイメージです/PIXTA)

出入国在留管理庁の調査によると、日本に在留する中国人は2025年6月末時点で約90万人に達している。2026年には100万人を突破する見通しのなか、日本では「中国人留学生」が急増し、とりわけ「美大」への集中が目立っている。この背景には、2017年に日本政府が実施した永住権取得までの大幅な要件緩和があるという――。日本経済新聞取材班『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)より、「日本の永住権」を取り巻く現状を、複数のデータや証言とともに紐解く。※登場する取材協力者の肩書や年齢は取材当時のものです。

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「日本の美大」に中国人留学生急増

東京都新宿区・高田馬場――。とある雑居ビルの部屋のドアを開けると、そこには見たことのない、異様な空間が広がっていた。

 

一瞬、中に入るのもためらうほどだった。空気が明らかに、日本のそれとは違っていたように思う。中をのぞくと、床の上にはたくさんのキャンバスが並べられ、多くの中国の若者が黙々と絵を描き、真剣なまなざしを向けていた。

 

「中国の若者は、そんなに絵を描くのが好きなのか? 絵を描くくらいなら、中国にいたってできるだろう?」

 

中国の若者の間で最近、日本の美大がとても人気だというから、一度はそんな予備校の様子を見ておきたいと立ち寄ってはみたが、当初はそんな思いにしか至らなかった。日本の美大がかつてほどの人気がなくなり、学生の確保に苦労しているとは聞いていた。一方で、そんな美大が今、中国の若者の間でとても人気だというのはやや意外であり、不思議に思っていた。

 

だが、この高田馬場の周辺を歩くと、やけに最近、中国人向けの大学予備校やら美大コースやら、それらしき看板が目に付くのは確かだった。実際、人気ではあるのだろう。ただ、どんな動機から今の中国の若者が、わざわざ日本にまで来て、高い予備校費用を払って通い、黙々とデッサンに励むのか。

 

そんなことを思い始めたのは、2024年9月のこと。彼ら、彼女らの「本当の動機」を知ることになったのは、それからしばらく後になってからだった。

 

出所: 各校の公表資料(2024年5月時点)を基に日経が作成。倉敷芸術科学大は22年5月時点
[図表1]美術系大学の中国人留学生数(各校で留学生の約7割を占める) 出所: 各校の公表資料(2024年5月時点)を基に日経が作成。倉敷芸術科学大は22年5月時点

 

東京藝術大学245人、武蔵野美術大学462人、多摩美術大学448人、京都芸術大学692人、京都精華大学823人、文化学園大学420人、名古屋芸術大学155人――。日本全国の美術系大学で今、中国人留学生が急増し、全留学生に占める比率が各校とも軒並み7割程度に達していることが、取材班の調査から分かった。

美大人気の背景に、「永住権取得」?

それにしても異常ともいえる人気である。本当に中国人の留学生は、日本の美大で学ぶことを楽しんでいるのだろうか。高田馬場に行ったあの日の帰り道から続く疑問。やはり背景には何かあるのではないか。そして取材を進めるうち、記者は1つの証言を得た。

 

「実はこの美大人気、日本の『永住権取得』とつながっているのです」

 

埼玉県内の中国人向け移住支援を手掛ける、ある女性エージェントは記者にそう明かした。美大人気と永住権―。これが一体、どこでどう結びつくのか。少し言いにくそうにした女性担当者には御礼だけを述べ、背景をじっくり探ろうと記者はまず、美術系の大学が集まる京都へと向かった。

 

次ページコロナ収束後から急増した中国人留学生

※本連載は、日本経済新聞取材班による著書『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会

ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会

日本経済新聞取材班

KADOKAWA

豊富なデータ分析・実名報道で移民問題に光を当てるノンフィクション! 第2回国際文化会館ジャーナリズム大賞受賞連載をもとに書き下ろし。 「我々は日本の中に今、広がる「中国」を可視化することにした。中国人のコミュ…

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