「家の中が、やけに静かなんです」転機になったのは
娘は都内で働き、家庭も持っています。仕事と育児に追われる日々の中で、両親からの頻繁な連絡は、次第に重荷になっていったようでした。
「『今は無理』って言われても、こっちは不安で……またかけてしまった」
和子さんは、そう振り返ります。
厚生労働省『国民生活基礎調査(2024年)』では、高齢者世帯の58.9%が生活について「苦しい」「やや苦しい」と感じていることが示されています。金銭的な困難だけでなく、「この先どうなるかわからない」という不安が、家族への依存につながるケースも多いとされます。
一方で、民法上の「扶養義務」(民法877条)は、無制限の支援を子に課すものではありません。現実には、子の生活状況や負担能力を踏まえた範囲で考えられるものであり、「家族だから何でも引き受ける」前提ではないのです。
娘との連絡が途絶えてから、佐藤さん夫婦の生活は一変しました。朝は会話も少なく、テレビの音だけが流れる。昼食も夕食も、決まった時間に淡々と済ませる日々です。
「家の中が、やけに静かなんです。電話が鳴らないって、こんなに音がないんだなって」
転機になったのは、近所の知人から勧められた地域包括支援センターへの相談でした。
●通院の送迎
●買い物支援
●見守りサービス
●将来的な住まいの選択肢
「娘に頼らなくても、話を聞いてくれる場所があるんだって、初めて知りました」
今、夫婦は月に一度、支援員と面談しながら生活を整えています。
「娘と、また話せる日が来るかは分かりません。でも……少なくとも、あの頃みたいに“しがみつく”ことはしないと思います」
高齢の親が子どもを頼ること自体が、悪いわけではありません。ただ、「頼る先が一つしかない」状態は、親にとっても子にとっても、関係を壊しやすくします。
築40年の家で始まった“静かすぎる毎日”は、佐藤さん夫婦にとって、家族の形を見直す時間でもありました。
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