(※写真はイメージです/PIXTA)

資産があっても“今月の支払い”に困る人がいます。背景にあるのは、資産の多くが不動産や長期運用商品に偏り、手元資金が薄い「資産はあるのに現金がない」状態です。高齢世帯は年金などの経常収入に対し、住居関連費や保険医療、税・社会保険料などの負担が重なり、家計のやりくりに不安を抱えやすい構造があります。老後の家計は、残高の“総額”よりも、資産の“形”と“流動性”に左右されるのです。

「資産はある。でも、払える現金がない」

「税金が払えなくて……相談できますか」

 

そう言って区役所の窓口を訪れたのは、都内に暮らす夫婦・田島裕之さん(仮名・74歳)と妻の恵美さん(仮名・72歳)でした。夫は元会社員で、妻もパート勤務を経て退職。子どもは独立しています。

 

住まいは都内の分譲マンション。数十年前に購入した部屋で、ローンは完済済みです。さらに、夫婦は相続などをきっかけに資産を増やし、金融資産と不動産評価を合わせると、世帯の資産は「2億8,000万円程度」と説明される水準でした。

 

それでも、相談に来た理由は切実でした。

 

「“資産があるなら払えるでしょう”って言われそうで、恥ずかしい気持ちもありました。でも、今月の支払いが回らないんです」

 

夫婦の資産の内訳は、いわゆる“現金・預金”が厚いものではありませんでした。

 

●住んでいるマンション(評価は高いが現金ではない)

●亡父から相続した地方の土地(売りたくても買い手がつきにくい)

●長期の運用商品(解約すると元本割れの可能性がある)

●預貯金は生活費として確保しているが、厚みはない

 

「まとまった資産があるから安心だと思っていました。ところが、税金の支払いみたいに“期限が決まっている出費”が来たとき、すぐに出せるお金が思った以上に少なかったんです」(裕之さん)

 

決定打になったのは、医療費の増加と、住まいの修繕関連の支出でした。高齢になるほど通院回数は増え、マンションでは管理費・修繕積立金も継続的に発生します。さらに一時金の負担が重なったタイミングで、税金の納付通知が届きました。

 

「この月だけ、どうしても足りない。クレジットで回すのも限界で……“延滞”という言葉が頭をよぎって、怖くなりました」(恵美さん)

 

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