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米国によるベネズエラ大統領拘束と国際的批判
2026年1月に起きた米国によるベネズエラ大統領の拘束事件は、国際的な注目を集めると同時に、主権侵害ではないかとの強い批判を受けました。
この出来事と類似する歴史的事例として挙げられるのが、1989年から翌1990年にかけて行われた米国によるパナマ侵攻です。
1989年のパナマ侵攻とノリエガ政権の崩壊
当時の米国は、パナマのノリエガ政権が麻薬密輸に関与しているなどの理由を掲げ、軍事侵攻に踏み切りました。
結果としてノリエガ将軍は拘束され、政権は崩壊しました。外国の指導者を「犯罪者」と位置付け、軍事力を背景に拘束するという構図は、今回のベネズエラ大統領拘束と重なる部分が少なくありません。
パナマ運河の建設と米国管理の歴史
パナマの戦略的重要性を理解するには、パナマ運河の歴史を振り返る必要があります。
パナマ運河は米国主導で建設され、1914年に開通しました。その後、運河地帯は事実上の米国管理下に置かれてきましたが、パナマ国内で民族運動が高まったことを受け、1977年にカーター大統領とパナマ政府との間で新パナマ運河条約が締結されました。
この条約により、運河は両国の共同管理を経て、最終的にパナマへ返還されることが決まりました。
運河返還と変わらぬ戦略的重要性
その過程で起きたのが1989年のパナマ侵攻であり、最終的には1999年末、米国はすべての運河関連施設をパナマに返還しました。表向きは主権回復の物語ですが、パナマ運河が米国の安全保障と通商にとって極めて重要な存在であり続けてきたことに変わりはありません。
この重要性は、近年の政治発言にも表れています。2024年の米国大統領選挙において、トランプ大統領候補は、パナマ運河を通過する米国船舶の通行料が高すぎること、さらに運河の両端に位置する港湾施設が香港系財閥によって所有されていることを問題視しました。
その後、2025年3月には、当該香港財閥の港湾事業が米国の資産運用会社に売却されることが決まりました。しかし、この取引に対し、中国政府は香港基本法に反する可能性があるとして強く反発しました。表向きは民間企業同士の取引であるにもかかわらず、中国政府が異例ともいえる介入姿勢を示した点は、国際的にも注目されました。
南米資源とパナマ運河を巡る米中の思惑
今回のベネズエラ大統領拘束事件と併せて考えると、米国と中国の双方が中南米、とりわけパナマ運河をいかに戦略的に重視しているかが浮かび上がります。
中国はベネズエラをはじめとする南米諸国で資源開発やインフラ投資を進めており、その輸送ルートとしてパナマ運河は欠かせない存在です。
ベネズエラ事件が示す地政学的緊張
香港財閥による港湾事業の譲渡は、形式上は私企業の経済取引にすぎません。
しかし、中国政府が強い関心を示した背景には、南米資源の安定確保と、その輸送の要衝であるパナマ運河をめぐる地政学的な利害があると考えられます。ベネズエラ事件は、こうした大国間の利害対立が、時に強硬な形で表面化することを示しています。
矢内 一好
国際課税研究
首席研究員
